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この作品は、原作の流れに沿って描いている描写もありますが、オリジナルで展開 していく予定です。 内容に納得がいかない、これは違う、これは苦手だ、などの不満 を抱かれた方はそこで読むのを止めて出来るだけスルーでお願い致します。 以上を踏まえて、『朝倉涼子の軌跡』宜しくお願いします。 ────────────────────────────────────────────────── 本編 ・『SOS団』 ・『朝倉涼子の思惑』 ・『この世の真実』 ・『涙』 ・『絶体絶命』 ────────────────────────────────────────────────── 断章 ・『心、通わせて』
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もくじ 「私の出番はまだにょろか!?」 「落ちついて下さい鶴屋さん。恐らく今回は僕の出番も殆ど無いかと…」 「でもモブとして出てくることはできてるじゃないっさ!」 「まぁ落ちついて下さいって…みんな見てますよ?」 「むー…このSSはグータラなSOS団を中心とした何の変哲も無い日常を描いたものになるっさ」 「特に過度な期待はしないでもらえると嬉しいですね」 「また要所に私のちっこいバージョンが存在するかもしれないけどすり潰して構わないにょろ」 「鶴屋さんそれはNGです…なおこの作品は「多分SOS団設立時」という作品のその後の話になります」 「というか前回の連載物ですら出番ゼロなんだよ!?」 「というかその連載のせいででこのシリーズに二ヶ月くらい空きましたからね」 「話の流れがわからない、もしくは忘れた人は前の作品も読んでもらえるとうれしいっさ!…私はでてないけどね…」 「…では本編開始です」 朝倉涼子迷走記 前編 中編 後編
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登録日:2009/07/21(火) 20 34 39 更新日:2024/05/16 Thu 17 32 41NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 あしゃくら あちゃくらさん うん それ無理☆ おでん アサシン アニヲタTOP画 サバイバルナイフ ダークヒロイン ヤンデレ 主婦 人造生命体 午前中は無敵 妙に人気 始まりの敵 委員長 宇宙人 対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース 情報統合思念体 敵女 朝倉涼子 桑谷夏子 殺し屋 消失 涼宮ハルヒの憂鬱 眉毛 美乳 長門の嫁 青髪ロング 驚愕 高校生 朝倉(あさくら)涼子(りょうこ)とは、涼宮ハルヒシリーズの登場人物である。 出典:涼宮ハルヒの追想、ガイズウェア、バンダイナムコゲームス、2011年5月12日、(C)2009 Nagaru Tanigawa・Noizi Ito/SOS団 (C)2011 NBGI CV 桑谷夏子 元北高1年5組の女子生徒で委員長。 身長160cm。 長門有希と同じ駅前の分譲マンションの505号室に住んでいる。 美人で人当たりの良い優等生であり、男女を問わず人気が高い。 谷口曰く「容姿はAAランク+(プラス)」。 しかしその正体は、長門と同じく情報統合思念体に造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースであり、急進派に属する。 元々の役割は長門のバックアップであったが、ハルヒが起こすであろう情報爆発を観測するため、 急進派の意向に沿う形でキョンの殺害を企てる。 そのため殺したがりのシリアルキラーではない…と思われる。実際に狙われたキョンにとっては関係ない話だが。 しかし計画を長門に阻止され、戦闘の末に敗れ消滅させられる。 その後は長門の情報操作により、急遽父親の都合でカナダへ引っ越したことにされた。 アニメではこの戦闘中の呪文を逆再生でスローにすると、 「キョン君の事好きなんでしょ? 分かってるって」と言いながら襲っている。 『涼宮ハルヒの消失』の改変された世界では、暴走前の状態で再登場。 長門を気に掛け、守ろうとする態度をとる。 出典:涼宮ハルヒの消失、SOS団、角川書店、角川映画、京都アニメーション、クロックワークス、ランティス、2010年2月6日、C)2009 Nagaru Tanigawa・Noizi Ito/SOS団 (C)2011 NBGI だがこちらはこちらで長門を重要視する想いや改変された世界を守ろうとする役割が極端に強かったため、改変を直しに来たキョンをナイフで刺した。 その後、年末年始合宿帰り直後から駆けつけた長門の手で消滅する。 『涼宮ハルヒの分裂』にてようやく舞台となる時間軸に復活。 九曜の影響により長門が倒れたため、緊急用バックアップとして振舞う。 そのため問答無用に襲い掛かってくるわけではなかった。 ■涼宮ハルヒの戸惑 作中ゲーム『スーパーSOS大戦 地球が情報操作される日』に登場。 このゲームは朝倉が本性を現したシーンをスパロボ風で表現したゲームのため、キョン達は朝倉と戦うことになる。 このゲームでの朝倉は長門が声マネで収録したという設定。 ■涼宮ハルヒの追想 出典:涼宮ハルヒの追想、ガイズウェア、バンダイナムコゲームス、2011年5月12日、(C)2009 Nagaru Tanigawa・Noizi Ito/SOS団 (C)2011 NBGI 消失の世界に近い世界なので普通の女子高生として登場。 キョンは直前にナイフで刺されたばかりだったので内心怖がっていたが、北高祭でのクラス展示での交流で打ち解けていった。 キョンのクラスは朝倉がいたのにアンケート発表だった。これは朝倉がアンケート発表を面白そうと思ったため。 しかし朝倉以外は無気力だったため、張り切って200人にアンケートを取っていた朝倉も……。 しかしクラスメイトとの一致団結を望んでいた朝倉はキョンに頼み事をしてくる。 キョンと相談した結果、北高祭当日なのに展示を変えることになり『知ったかぶりハムレット』という朗読劇をすることに。 しかし時間がなかったことと主演の谷口が親切心でやったことが裏目に出て……。 クイズ研究部の『クイズ・ビリオネヤ』出たがっており、キョンに受付を変わってもらい出場出来る事に。 ■長門有希ちゃんの消失 脇役だった原作とは異なり、長門、キョンに次ぐ準主人公に昇進。それに伴って大幅に出番が増えた。長門とは幼少時からの腐れ縁。 涼宮ハルヒちゃんの憂鬱での『消失』編での設定が反映されて長門の親友……というか最早通い妻を越えて母親化している。 原作とはかなりキャラが違うため、中の人はかなり戸惑ったらしい。 そのため原作などとは違い、ナイフを振り回したりキョンの命を狙うことはない……が、中の人にはそれが寂しいらしい。 ●代表的なセリフ 「やらないで後悔するより、やって後悔したほうが良いって言うでしょ?」 「あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見る」 「死ぬのって嫌? 殺されたくない? 私には、有機生命体の死の概念がよく理解できないんだけど……」 「うん、それ無理☆」 ※以下パラレル ▼あちゃくらさん 『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』の登場人物。 長門有希に破れて消滅したかと思いきや、バックアップによって復活を果たすがなぜかサイズが小さくなった(性格も幼児化した)。 以後、長門に偶然拾われて飼われている。 復活後もキョンの抹殺を使命として企てているが、すれ違い等でうまくいかない(現在は、使命をも忘れかけている)。 宇宙的パワーを使えるが、使うとさらに体が縮む。 同居先である長門宅では思いのほか家庭的で、普段は午前中を中心に家事を行う。主婦モードの彼女は無敵。 ハルヒちゃんの長門は、 ゲームで徹夜、夜更かしは当たり前 夕飯の前にお菓子を食べて注意される 課金しすぎてお小遣いを制限される スイカの食べ過ぎで倒れる 等、色々ダメ人間なのであちゃくらさんがいないと長門家は崩壊する。 長門にいじられたりしているが、長門やキミドリさんとは結構楽しく暮らしている。 喜怒哀楽を素直に表す姿は中の人が同じ某庭師姉妹の翠の子のよう? 竹製の小刀を握ると朝倉だった頃を思い出し、天敵のはずの猫をも追いやる。 また、『消失』のエピソードを再現した際には長門の通い妻化していた。 『消失』映画記念では久々の登場に表紙のポーズをとり、キョンのジャケットを奪って再現ドロボーをやらかした。 …が、あまりにもはしゃぎ過ぎたので… 『驚愕』以後は猫化した九曜『くにょん』と対峙するも、原作より能力の差に開きがあったためコマ割りを使ったメタ能力で完封された。その後も度々闘っていたが、喜緑さんがバイト中長門家に預けられたくにょんの世話係に。 しっかり者の姉と手のかかる妹のような感じで微笑ましいかも。 以下、主な形態 幼 復活後のあちゃくらさん。バスケットボールより小さい。長門が買ってきたTシャツの文字より。 (また何かベビー用品に入れられてる!) 特小 能力を使ったため掌サイズと化したあちゃくらさん。因みに使いすぎると消滅するらしい。 長門が興味を持ったためキミドリさんから300円で売られた。 「私ね◯どろいどぷちより安っ!」 小 幼より少し大きくなった形態。だいたい長門の膝くらい。Tシャツの文字より。 「ふっ 帰りましたか…トドメを刺さずに戦場から消えるとは相手も甘っちょろいものです…決着がついてないということはこの勝負もまだ終わってはいないと言うのに…覚えておけ 次会うときが奴の息の根が止まるとき!」 ※尻が何か申しております 愛と野望の宇宙女子高生 宇宙少女マジカル☆涼子 構成情報の容量不足によりスリープ状態のキミドリさんを救うために自身の元に戻る情報を提供し、互いの思いやる心がクロスカウンターした結果誕生したファンシーな魔法少女。 ※意味分からないと思いますが大丈夫 たとえ読んでもよくわかりません 大きさは中学生程度。 当然一発ネタと思われたが… 中 スーパーサ◯ヤ人1を維持する修行の如くマジカル☆涼子形態に常時変身して慣れていき、魔法少女衣装を取っ払って完成した形態。 中学生女子相当で、更にノーリスクでの力の使用も復活したが長門には勝てなかった。 因みにこの時点で長門より胸が………… 長門(朝倉) ハルヒの夏休みデビュー命令+エンドレスエイト踏破記念休暇に突入した長門により送り込まれた、長門の髪型をした朝倉。 イメチェン度合いが凄まじくキョンも初見は誰だと戸惑ったが、あの部位で気付いた。 「今 どこ見て気付いた?」 メイド姿の朝比奈(大)に「エッチなのはよくないわね」と威圧したが、実はメイド服が着たかったらしい。 数日後、飽きたハルヒによってキョンとヤスミが元に戻るよう説得に来たが、その頃には人当たりと要領の良さによってクラスで必要な存在にまでなっていた。 最終的にエンドレス休暇に入りそうだった長門と共にキョンが説教して元に戻る。 大 普通の朝倉さん。 一度、甘酒を飲んで二日酔い状態になり元に戻った(アルコールに対する抵抗力がなかったらしい)が、二日酔いから醒めるとあちゃくらサイズに戻ってしまった。 ハルヒちゃんの力で世界がチビキャラ化した時はひっくり返って元に戻り、逆にチビキャラ化した長門との力関係も逆転した…が、チビ長門の可愛さに母性本能が爆発し、やったことはチビ長門を抱き締めて愛でて遊ぶだけだった。 驚愕以後には各形態に自由に変身可能となっている模様。 ▼あしゃくらさん にょろーん☆ちゅるやさんに出てくる小さな朝倉さん。 普通の朝倉さん自体は出てくるので違う存在の可能性がある。 キョンのことが好き。 いつもキョンと一緒にいるちゅるやさんに嫉妬したりしているが、ちゅるやさんの方は仲良くしたいと思っている。 みんなからの扱いはちゅるやさんと同じかそれ以上にぞんざい。 あちゃくらさん「もぉ~長門さんたら項目放置して、ちゃんと追記・修正しなきゃダメじゃないですか」 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] まさか分裂や驚愕といったパラレルじゃない本世界で再登場した時は驚いた -- 名無しさん (2013-12-04 05 07 38) 長門の項目で「長門がサウンドウェーブっぽい」って話があったが、こいつはブロードキャストっぽくはない。 -- 名無しさん (2014-01-26 22 21 49) ナイフ持つとポーカーフェイス。 -- 名無しさん (2014-04-29 21 48 10) 私は原作を見ないまま映画行ったから愕然としたよ 個人的に映画見てからの原作もいいと思う -- 名無しさん (2014-04-30 04 06 11) スピンオフの作品見て「キャラ違くない?」とも思ったけど、「これはこれで可愛い」と落とされました -- 名無しさん (2014-06-27 06 03 07) クラスにこんな人がいたらきっと惚れてる。 -- 名無しさん (2014-07-09 17 47 09) 本編の朝倉さんより「ハルヒちゃん」のあちゃくらさんが好きな私はそろそろ逮捕されていい。 -- 名無しさん (2014-09-14 14 33 34) ? -- ? (2014-12-26 12 07 52) ロッドの巨人化はあっさりケリがついたなー。 -- 名無しさん (2015-04-21 23 42 13) 片目の瞼を縫われたあの娘ね 朝倉さん美人 -- 名無しさん (2015-10-05 20 16 20) 彼女が好きな人は、いわゆる80年代ヒロインが好きって考察がどっかにあったな -- 名無しさん (2016-05-18 12 07 55) ↑それだと三角関係モノでいう告白してふられるか、デートとかするけど最終的に別のヒロインのために身を引く系って感じかね -- 名無しさん (2016-11-13 16 59 49) 青いあいつ -- 名無しさん (2017-08-03 11 29 17) 違反コメ削除 -- 名無しさん (2017-11-19 14 20 14) 名前 コメント
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長編 朝倉涼子 ニューソク・デ・やらない夫の憂鬱 オリジナル 完結済み やる夫がドラゴンクエスト3で遊び人になるようです・やる夫がドラゴンクエスト3で賢者になったようです 元ネタ有り:ドラゴンクエスト3 完結済み 通称:賢者 やる夫がお隣のお姉さんを孕ませたようです オリジナル 完結済み やる夫の戦国立志伝 元ネタ有り:戦国立志伝5 やる夫は幸せになりたかったようです・やる夫は幸せになれなかったようです オリジナル 完結済み 童貞救世主!やらない夫のオナニーSTORY! オリジナル 完結済み Sa・Ga2やる夫の秘宝伝説 元ネタ有り:Sa・Ga2 秘宝伝説 完結済み 新世紀オナニー覇王伝やる夫 オリジナル 完結済み ニューソク・デ・やる夫にエロゲーを 元ネタ有り:アルジャーノンに花束を 完結済み 新桃太郎伝説 やる夫が伐折羅王をこらしめに行くようです 元ネタ有り:新桃太郎伝説 完結済み やる夫が料理を始めるようです オリジナル やる夫はマイホームパパのようです オリジナル やる夫は水銀燈を射止めたようです オリジナル やる夫のエロゲー的ライフ オリジナル やる夫が時空の旅人になるようです 元ネタ有り:眉村卓「とらえられたスクールバス」 やらない夫がドラゴンクエスト8で決めるようです 元ネタ有り:ドラゴンクエスト8 完結済み やる夫がドラゴンクエスト5の主人公のようです 元ネタ有り:ドラゴンクエスト5 完結済み やらない夫は弓を引き絞るようです 元ネタ有り:ソード・ワールド2.0 やる夫達はどうしようもないようです。 オリジナル 完結済み やる夫がフラグを立てたり立てなかったりするようです オリジナル やる夫がゼノギアスに関わるようです 元ネタ有り:ゼノギアス やる夫がファルガイアを救うようです 元ネタ有り:WILD ARMS ヒロイン:朝倉涼子・シグナム やる夫とヴァナディール 元ネタ有り:ファイナルファンタジー11 やる夫でいきなりトルネコ3 元ネタ有り:トルネコの大冒険3GBA 完結済み ヒロイン:真紅・朝倉涼子 やらない夫はFF7の主人公のようです 元ネタ有り:ファイナルファンタジー7 ヒロイン:朝倉涼子・涼宮ハルヒ・泉こなた やらない夫はCOOLに決めるようです オリジナル やらない夫は運命に弄ばれているようです 元ネタ有り:ロマンシング・サガ ミストレルソング ヒロイン:朝倉涼子・できない子 やる夫が悪の変人たちと大騒ぎするようです オリジナル 完結済み ヒロイン:真紅、朝倉涼子 やる夫はフラグクラッシャーのようです オリジナル やる夫が巨大都市の影を疾走するようです 二次創作:TRPG シャドウラン 第4版 ヒロイン:真紅・朝倉涼子 やらない夫と金糸雀の怪しいエピソード!! オリジナル ヒロイン:金糸雀・朝倉涼子 恋愛要素なし
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『朝倉涼子の思惑』 情報統合思念体の把握していた規定事項に反して、涼宮ハルヒによりSOS団が設立された。 この事項に関与しているのは、この惑星に於いての観察活動を統括する長門有希が、涼宮ハルヒに 最も近い位置 での観察をなし崩し的に担当を請け負う形になってしまった。 それ故、自身の立場を懸念した涼子はある一つの計画を立案し、密かに行動に移していたのである。 長門有希にSOS団設立にあたっての変更指令を告げられてから数日が過ぎ去った木曜日の事。 澄み渡った蒼窮の下、涼子は胸を躍らせる想いで通学路を駆けていた。 一人の少年が必ず通学時に使用する自転車を、駐輪場に停めて必ず通る小道の先の交差点で、偶然を 装って接触するという物だった。 然し、人間とは気まぐれな生き物であり、未来や過去の同期を取ってしても測れない人物の挙動を探 るのには困難を要した。 それ故の数日に渡る分析であり、ようやく念願の待ち伏せが成就する。気だるそうに歩を進めるキョ ンの前に、偶然を装い弾む様に前に飛び出した涼子は驚嘆と共に声を発した。 「わっ!びっくりした……」 「うおっ!」 涼子は狙い通りの結果に口端が緩み、キョンは純粋に驚愕する。 「何だーキョン君か……、驚かせないでよね、もう」 少し拗ねたように見せ、上目遣いで若干背の高いキョンを見上げる。涼子の艶かしい笑みを当てられ、 キョンは高揚で顔を真っ赤に染め上げ堪らず視線を逸らした。 はたして、涼子の企みは計画通りに始まったのだった。 (偶然……だよな) 横に並ぶ朝倉涼子の横顔を目線だけで眺め、そんな事を思案しながら感嘆の息を漏らした。 贔屓目に見なくても、ティーンズ雑誌などに出ていてもおかしくない、鶴の様なスラリとした長い手足。 端正に整った美貌。艶に輝く青黒いロングストレートの髪。何より鼻孔をかすめる甘い香りが、情熱を ……持て余す。 そんな欲望を持て余したキョンの弛んだ顔を、唐突に涼子が訝しげに覗き込んだ。 「どうしたの?」 「いっ、いや、何でもな痛っ!」 慌てたキョンは、足をもつれさせたたらを踏み、傾いだ身体は慣性のまま後ろに倒れ危うく転がり掛けた。 なにしろそこは傾度三十度は越えるだろう、急な坂道だ。故に、簡単に転びもすれば転がるのもまた容易な のだ。 「ちょっ……、やだっ大丈夫?」 「あっ、……ああ。すまない」 差し出された涼子の手を取り、その手の柔らかさに感動しつつ腰を上げた。 キョンは恥ずかしそうに真っ赤に高揚した顔を歪め、から笑いをする。 ややあって、最初こそ怪訝な面持ちでいた涼子も釣られて笑い、いつしか二人して自然に笑い合っていた。 「ははっ結構ドジ何だね、キョン君」 「それほどでも」 「褒めてないって!」 そうして自然に振る舞える朝倉涼子は、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースの 中でも最も人間に近しい機構を持った端末として造られた所以だ。 それから、二人して北高までの道すがら、他愛もない話で盛り上がった。 * 最近はキョンに対しての接触が密になった朝倉涼子。これに対して快く思わない人物が居た。 未だに登校した生徒はまばら、その中に欝々としたオーラを周囲に放ち、窓硝子が溶けんばかりに爛々 とした瞳で睨み付けている少女が居た。 涼宮ハルヒである。 彼女が見たのは、先日設立したSOS団団員その一と、何かと目立つクラス委員が、二人して仲良く登校 してきたのを見付けたのだ。何故だか、腹が立った。胸の奥にもやもやとした、漠然とした感覚が更に苛 立ちを加速させる。しばらくして、教室に入って来た少年、珍妙な綽名で慣れ親しまれているキョンを、 「チッ……」 舌打ちをし、侮蔑を孕んだ視線で睨み付けてやった。 「おう……」 はたして、キョンは明らかな動揺を見せた。 (何よ、朝っぱらからデレデレしちゃって……) 別に自分が気にするでもない事に、何故こんなにも自分が苛立っているのか、よく分からなかった。 だけど、この鬱憤を晴らす為に後でシャーペンの先で背中でもつついてやろうと決めた。 唐突に寒気を感じたキョンは、恐らくその発生元と思しき人物を見て、その侮蔑を孕んだ視線と視線が 絡み合い、戦慄した。 (い、いつにも増して不機嫌だな……。出来れば関わりたくは無いが、関わらない訳にはいかんだろう な……) そんな思考を逡巡し、覚束ない足取りで自分の席に向かう。 「おっ、おはよう、涼宮……」 だが、ハルヒは不機嫌オーラを垂れ流し状態にあり、視線を一度合わせ、 「ふんっ」 会話をする余地すら与え無かった。 (やれやれ……) 今日一日、この不機嫌オーラを背に過ごすかと思うと気が滅入りそうだ、と、キョンはかぶりを振った。 * 涼宮ハルヒが不機嫌だ――というだけで、周囲は触らぬ神に祟り無し、もとい触らぬ変人に祟り無しと 言った感じで、教師すら避ける程だった。 未だ同好会としてすら認可されていないSOS団が設立された当日の内に、文化部部室棟3階にある文芸 部室の隣に部室を構えるコンピュータ研究会、略してコンピ研からの最新型PCの脅迫まがいの奪取に付け 加え、翌日の放課後にバニーガール姿でビラ配りをする、という奇行に走った涼宮ハルヒは、瞬く間に希代の 変人として名を轟かせ、今では北高における時の人となりつつあった。 涼宮曰く、「任意同行よ」の元連れ拐われて来た美少女、朝比奈みくるは精神的被害を一番被っていた。 セクハラ写真のネタにされたり、無理矢理バニーガール姿に着替えさせられビラ配りに同行させられたり。 だが、一日休んだだけでめげずにSOS団が不法占拠をしている──本来は文芸部室である──に通い続け ている健気な姿には感銘すら覚える。 一方、SOS団の中に強制的に組み込まれた文芸部部長である長門有希は、不変不動の大仏よろしく窓際 の席に鎮座している。この眼鏡娘は涼宮ハルヒに感化されず、あくまでマイペースに過ごしている。 その後、九組に転校してきた、涼宮曰く 謎の転校生、古泉一樹 。 彼は別に被害は被っていないと思われる。どの様な勧誘を受けたのか、キョンには知る由も無いが。涼し げな表情でやんわりと涼宮に対して応対する辺り、当たり障りのない人間だと思われる。 そして、今悩める人として、本日二時限目に行われている英語の授業の最中、頬杖を付きギラギラとした 熱い眼差しで黒板を忌々しげに睨み付けている少年が居た。 眼からレーザを出して黒板を炭化させてやろうとしている訳では、ない。 ただ、先刻から背中をチクリチクリと先のとがった……シャーペンで突かれているのだ。 その少年というのは、言わずと知れた涼宮ハルヒの奇行における第一の犠牲者である珍妙な綽名の男、 キョンである。 (一体俺が何をした!?何故、ここまで執拗に鬱憤を晴らす為の的にされなければならん……!) 彼の心中は決して穏やかでは無かった。 それもそうだ。二十分程チクリ、チクリと背中を蹂躙されれば堪ったものではない。 だが、ここで思惑通りの行動を取ってしまえば、涼宮の思う壷だ。 (男には耐えねばならん時がある、それが今なんだ!) 無駄に意気込み、無駄に眼をギラ付かせ異様な雰囲気を周囲にたらしめていた。 (つまんないつまんないつまんない!) 犯人である涼宮ハルヒは、完全に無視を決め込まれ不満を募らせていた。 (何よ、あの女にはヘラヘラ下手に出る癖に、あたしの相手は出来ないって訳!?) その時、思わず力が入り、今までより強く、深く、シャーペンの先がキョンの背中に刺さった。 「あっ」 ハルヒは間の抜けた声を出し。 「あんっ……」 キョンの間抜けな悲鳴が静まり返った教室内に響いた。 そこかしこで、二人のやりとりを眺めていた何人かの笑いを堪える声が漏れる中、力無く机に突っ伏した キョンは、憤然と体を起こし勢いを殺さず後ろ振り返り、怒りのまま叫んだ。 「何しやがる!」 笑いを堪えるのに必死だったハルヒは、 「な……何よ……くくっ」 「な、何笑ってんだよ……」 「あ……あんたが、へ、変な声出すから、くっ、ぶふぅ!」 「失礼な奴め、大体好きで出した訳じゃない!」 二人のやり取りを見ていた朝倉涼子は自分の予想通り、涼宮ハルヒの精神状態が少年の行動一つで感化 された事に満足していた。 しかし、涼宮ハルヒの満足気な笑顔、キョンの一挙手一投足を見て、処理不能のエラーが蓄積されて行く。 こんなの嫌。気が付けば、そう感じていた。 居ても立っても居られなくなり、制止に入る。本来授業中なのだから、二人の行動は異端である。 「二人共、今は授業中だよ」 故に、クラス委員長としては自然な行動である。 絵に書いた様な美人のクラス委員長、というのが朝倉涼子であり、皆が感嘆の声を漏らすのも頷ける。 キョンも申し訳なさそうに席に着き、しかし、涼宮ハルヒは「ふんっ」と鼻を鳴らして再び不機嫌になった のを最後に見て、涼子は前に向き直った。 * 昼休みにて、ハルヒが学食に向かった頃合いを見計らって、中学からの腐れ縁の国木田に加え、国木田と席 が近かった為に会話を持つ様になった谷口が弁当を片手にキョンの机に集った。 いつもの様に、各々他人の席に腰を下ろし、弁当の小包を開いた。 キョンは鞄の中から、通学途中コンビニで買った菓子パンを取り出すと、 「あれ?キョン。今日は弁当じゃないんだ?」 と、国木田が不思議そうに菓子パンを見詰めて言う。 「ああ、親が最近忙しいらしくてな」 「それなら涼宮と学食に行けば良いじゃないか」 谷口が間に茶々を入れる。 「あのな、別に俺はアイツと常に一緒じゃないんだ。心休まる一時ぐらい有ってもいいだろ?」 「……お前達、付き合ってるんじゃないのか?」 谷口が素っ頓狂な事を口走る。 危うく一口食べた菓子パンを吹き掛けたキョンは慌てて訂正する。 「誤解を招く様な事を言うな!そんな訳無いだろ!?」 「あれ?僕も付き合ってるものだと思ってたけど」 おかずを丁寧に切り分けながら平然と国木田。 「全く……遺憾だ」 各々、他愛も無い雑談を交しながら箸を進めていた。 「なあ、キョン。お前一体どんな手法を使ったんだ?」 それまでの雑談を切り上げ、谷口が白米を咀嚼の途中にも関わらず、唐突に主語の抜けた問掛けをする。 「何の話だ?」 キョンは怪訝な面持ちで答える。 「何って、朝倉涼子だよ」 谷口は机に身を乗り出し、視線は話題の少女に向ける。 「ああ、僕も気になるな。今日、朝一緒に登校してたんでしょ?」 「ああ、朝偶然会ってな。それで一緒に来ただけだが」 何の気無しに答えるキョンも、ふと視線を少女に向けようと視線を泳がせる──がそこには彼女の姿は 無かった。 「何の話?」 唐突に、話題の少女の声が直ぐ側で発っせられた。 「えっ?」 「へっ?」 「ん?」 三者三様の間抜けな声を上げ、唖然とする。 「私の名前、聴こえたから。ねぇ、何の話してたの?」 思いも寄らぬ本人による詰問に、三人共声を詰まらせ、ややあって口を開いたのは谷口だった。 「いや、別に何でも無いんだ。なあ、キョン?」 「あ……、ああ。特に何も……はは、は……」 苦し紛れ……といった二人の様子を訝る様に見つめ、困った様に眉根をしかめた涼子は、キョンの手元 を見て呟いた。 「あれ?キョン君お弁当やめたんだ?」 予想外の質問に、漸く平静を取り戻しつつあったキョンに追い討ちを掛ける。 「えっ?ああ、これは、だな。親が最近い、忙しくて」 キョンは声を上擦らせながらも言い切ると。 「ふーん……、もし良ければ私がお弁当、作ってあげようか?」 「まじでか?あ……でも」 突然の申し出にしどろもどろになるキョンを見て、涼子は満面の笑みで告げた。 「遠慮しないでいいよ?こう見えて料理は得意なの。じゃあ明日から持って来るから楽しみにしててね?」 それだけ言うと、スカートを翻し、元の女子グループの所に戻って行った。 ともあれ、残された三人はと言うと。 「なあ、一体どういう事だキョン?」 「羨ましいなあキョン。クラスメイトから手作り弁当だなんて」 (全く……、何でこうなるんだ……) 嘆息を漏らしながら、谷口に体を揺さぶられ、詰問を受ける(主に谷口から)羽目となったキョンで あった。 * 日も暮れて、昼間の喧騒が嘘の様に辺りは闇夜の静寂に包まれていた。 その中を一際目立つ美少女、朝倉涼子は鼻唄等を唄いながら帰途にいた。 今日、彼女は上機嫌という感覚を初めて知った。 最初は戸惑いはしたものの、いつもは作り笑いしか出来ない自分から、自然と顔が綻び笑みを作って いた。悪くない、実に悪くない気分だった。 帰りに寄ったスーパーで、思ったより材料を選ぶのに時間を費やしたりもした。それに食材を必要以 上に買い込んでしまった。 「どうしよう……、でも、沢山食べて貰えばいいか」 それに、今日は長門さんにシチューでもご馳走しよう。 そう呟きながら、足取りは至って軽やか。分譲マンションのエントランスを抜けエレベータに乗り目 的の部屋に辿り着く。礼儀作法としてチャイムを一度鳴らしたが、反応はない。 「何時もなら帰ってるのに、長門さん何処行ってるのかしら?」 まあ、居ないなら仕方ない。諦めて、床に置いた荷物を拾い上げ顔を上げると。 「あ、朝倉?」 「え、キョン君?それに長門さん……」 訪ね人は予想外の人物を引き連れて、三人は邂逅を果たした。 * テレビもねぇ、ソファーもねぇ、生活感の欠片もねぇ!と、何処かで聴いた節を危うく口遊みそうに なったキョンはぐっと堪え、改めてリビングに視線を泳がせた。が、やはり何もない。あるのは部屋の 真ん中に火燵が無造作に置かれているだけだった。 「その辺りに座っててね、直ぐに作っちゃうから」 朝倉の言葉に甘えて、というのもおかしな話ではあるが、家主である長門はコタツに入り微動だにせ ず、戸惑いながらもキョンは長門の対の位置に腰を下ろした。 トントントン……と、包丁が規則正しいリズムでまな板を叩く音だけがリビングに響く。 キョンは居心地の悪さを紛らす為、思い付いたまま言葉を発した。 「な、なぁ長門。お前と朝倉の関係って何だ?友達か?」 「……恐らく」 「そっ、そうか」 長門相手に会話を成立させるのが、如何に難儀か思い知らされる。 そもそも此処にキョンを連れて来たのは長門であり、彼女は涼宮ハルヒに関する重要事項を伝える為 に彼を呼び出したのだ。 その手法は、本に待ち合わせ場所である光陽園駅前公園と時間を書いた栞を挟んで渡すという個性的 な物であったが。元々読書を好まないキョンは、借りた本を自室に放置していた。 それから二日が経ち、長門に本を読むように催促され、栞の存在に気付き、現在に至るという訳だ。 (長門からわざわざ呼び出すくらいだ。何か余程大事な用事なんだろうが。何故、何も言わないんだ? 朝倉がいるからか?) 視線をキッチンに移す。 上機嫌で料理を作っている朝倉に、長門と大事な話があるからと切り出すには中々勇気がいる。 再び正面にいる長門に視線を戻すと、 「お茶、いる」 突然、お茶を要求された。 訝る様に顔を顰めたキョンを見て、長門は改めて言い直す。 「いる?」 ようやくその言葉で理解したキョンは頷きで返す。 それを了解と見て取った長門は、そろそろと火燵から腰を上げてキッチンに向かう。その足取りは、 忍者よろしく音も立てていなかった。 そんな少女の背中を目線で追いつつ、改めてキョンは彼女の表現の乏しさに違和感を覚えた。 (人付き合いが苦手だとしても、ここまで感情表現に乏しくなるものだろうか……?) 彼女、長門有希はまるで動く人形の様な不自然さを持っていた。それも、十五年生きてきた人間とは 思えない程に。 * 意外な珍入者に、具材を刻んでいた手を休め傍らに置いてあったハンドタオルで手を拭った。 「どうしたの?長門さん」 涼子はキッチンの入り口で佇む長門に声を掛けた。 「お湯」 と、一言告げた後、長門はシステムキッチンの下側の収納棚を開き、目当ての薬鑵(やかん)を手に取り 水を入れ始めた。 一連の無駄の無い動きを横目で眺めながら、涼子は一番気になる懸案事項を長門に聞く事にする。 「ねぇ、長門さん。今日、どうして彼を此処に連れて来たの?」 涼やかな嫌味の無い声で。 長門はゆっくりとした挙動で小振りの肢体を涼子に向けた。 「彼は涼宮ハルヒに関して、 鍵 となる人物に当たると上層部に報告した。その結果、彼に涼宮ハルヒに 対して迂濶な行動を取らせない様にする為、彼に真実を告げる様指示が下った」 長門の凛とした、それでいて透き通る声で饒舌に語る。差し出された薬鑵を受取り、火に掛けながら沸 き上がる困惑を必死に隠す。 (嘘……、まさかそんな事になるだなんて。でも、そうなるのは時間の問題だったはず……でも) 再び長門を正面に見据え、涼子は汗ばむ掌を握り締めた。 「もしかして、 私達 の事も?」 そう言葉にするのがやっとだった。動揺を察知される訳にはいかない。 何故、そう何故だか分からないが、彼に自分が造られた存在だと知られたく無かった。 長門は頷き、揺るがない意思をその双眸が語る。 「無論、 私達 の存在を含め彼に伝える。でも、心配しないで」 「……?」 この後に及んで何を心配するなと言うのだ。涼子は首を傾げた。 「あなたの事は伏せておく。だが、余り涼宮ハルヒを刺激しない様に」 瞬時にその言葉の意味を理解した。 刹那。 「何の話、してるんだ?」 話題の当人が割り入って来たのだ。これには流石に涼子も動揺を隠せず、長門は至って平然としていた。 「な、何かな?」 上擦りそうになる声を抑えつつ、それだけを絞り出す。 「何って、お湯沸いてるぞ」 「あっ」 キョンの指差した方向に視線を送ると、いつの間にかお湯が沸騰し、蒸気が立ち込めていた。 急いで火を止め、引きつった笑みを二人に向ける。 キョンはやれやれ、といった感じで苦笑し。長門は顔を顰めている様に見えた気がする。 「ごめんね」 涼子は広げた両手の指先を合わせて、何と無く謝っていた。 * 差し出された湯飲みを手に取り、一口含む。 (市販物……だろうな) 別に茶葉に関して知識がある訳でも無い。そんな自分が香りや風味に感想を述べるのも気が引けたキョン は、黙ってそのまま湯飲みを置く。 それを何かのサインと見たのか、先程まで淡々と緑茶を堪能していた(実際はどうだか知る由もない)長 門がようやっと口を開いた。 「おいしい?」 「えっ?」 「お茶」 「あっ……う、美味いよ」 「そう」 今までで一番会話が続いた気がする。キョンは驚愕と幾ばくかの喜びを感じて、会話が終わらない様口を 開く。 「家の人は?」 「いない」 「いや、いないのは見れば解るんだが……。出掛けていて……とかか?」 「最初から私しかいない」 「ひょっとすると、一人暮らしなのか?」 「そう」 高級マンションに高校生になったばかりの女の子が一人暮らしとは、色々とワケありなんだろうな。と、 キョンは怪訝な面持ちで目の前でお茶を啜る少女を眺めた。 しかし、勘繰る様な真似はしなかった。 「長門、そろそろ俺をここに連れてきた理由を教えてくれないか?」 長門はコトリ、と湯のみを火燵の天板の上に置き、しかし一向に語る事も無かった。 「学校では出来ない話って何だ?」 長門はキョンの詰問にようやく重く閉じられた口を開いた。 「涼宮ハルヒの事」 凛とした透き通る様な声で。 「それと、私の事」 口を噤み一拍置き、「あなたに教えておく」と言った後再び黙り込む。 (どうにかならないのか、この話し方は) キョンは若干の苛立ちを抑えつつ、聞き返した。 「涼宮とお前が何だって?」 キョンは長門が困惑や躊躇と言った感情を、無表情の顔に僅かながら浮かべた感情の起伏を見逃さなかっ た。 「うまく言語化出来ない。情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない。でも、聞いて」 そして、リビングまで漂ってきたシチューの香りが、腹の蟲を鳴かせる前に長門は語り出した。
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この作品は、原作の流れに沿って描いている描写もありますが、オリジナルで展開 していく予定です。 内容に納得がいかない、これは違う、これは苦手だ、などの不満 を抱かれた方はそこで読むのを止めて出来るだけスルーでお願い致します。 以上を踏まえて、『朝倉涼子の軌跡』宜しくお願いします。 ────────────────────────────────────────────────── 本編 ・『SOS団』 ・『朝倉涼子の思惑』 ・『この世の真実』 ・『涙』 ・『絶体絶命』 ────────────────────────────────────────────────── 断章 ・『心、通わせて』
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暮れてゆく年 去年よりものの増えた部屋 窓から見える変わらぬ景色 空から降り行く無数の粉雪 あの人から、あの人たちからもらったたくさんの大切なもの 言葉にはできないけど、とても大切なもの 私は私の部屋でゆっくりと感じていた - ピンポーン - 突如鳴り響く来訪者のベル 私はゆっくり席を立ち、来訪者を迎え入れた 「おでんできたから一緒に食べましょ?晩御飯はまだだよね?」 「まだ」 前のような偽りではない笑顔 紺色の長い髪 朝倉涼子を、部屋に招きいれる If Story - 朝倉涼子と長門有希の日常 - ……… …… … 「相変わらず、殺風景な部屋ね」 「そう」 朝倉涼子は部屋を見渡し、呆れる様に語る 「ま、キョン君が来てから多少物は増えたかな」 クスクスと笑ってコタツの上におでんの入った鍋を置いた 私は台所から二人分の食器を運んでくる 「さ、食べましょ」 笑顔で私に笑いかける彼女 彼女に促されて私も席に着く 大根 はんぺん こんにゃく etc... 舌が火傷してしまいそうな熱さの物を、ゆっくりと口に運ぶ そして香りと味を感じる 「相変わらずよく食べるわね?太っちゃうわよ?」 朝倉涼子が私を見てからかいながら言う 「問題ない、涼宮ハルヒの観察という任務においてエネルギー消費量は通常より高い」 私はいつもどおりの返事を返す 「そういうこと言ってるんじゃないんだけどなぁ」 「?」 朝倉涼子が少し身を乗り出す 「おいしい?長門さん」 そうやって純粋に聞いてくる 私は無言でうなずいた 「あは、よかった」 その笑顔は、とても綺麗だった 彼が来てから変わったのは私だけじゃない 朝倉涼子も同じように変化した 最初は任務の為に、その結果の為だけに動いてた朝倉涼子 しかし彼との出会いが、彼女に意思と言うものを与えた そう、私と同じように 何事もない、静かな日常 何事もない、緩やかな日々 三年前の私とは違う 何事もない、充実した生活 決して変わることのない運命、命令、任務 しかしそれを遂行していく日常のほうが変化していく これは決して嫌なことではない 私と朝倉涼子の間にあった距離も、確実に縮まっていた それは、何より そう、嬉しいことだった 「長門さん」 朝倉涼子が言葉を発する 「何」 「明日の土曜日、ヒマ?」 無言でうなずく 確か今週の不思議探検は涼宮ハルヒの都合で中止されたはず 「そ?よかった、じゃあ一緒にどっか遊びに行かない?」 「何処へ?」 「まだ行ったことない動物園とか遊園地とか」 その笑顔は無邪気で、まるで子供のようだった でも、その笑顔が、何より好きだった 私は無言で頷く 彼女の笑顔をもっと見ていたかったから 「ホント?じゃあお弁当の準備もしなきゃね」 そのあとは適当な世間話、そしていつもの情報統合思念体に対しての定時報告 そうやっていつもの日常を繰り返す 「じゃ、私はこれで」 朝倉涼子は席を立ち、私にウィンクしながら語る 「そう」 私も、じっと彼女を見送る 彼女を少しでも長く見ていたかったから 私とは違う、私の別の可能性 彼女は私の、大切な”トモダチ” 明日の予定を思いながら、私は窓の外の景色を眺めた 大切な日常 大切な仲間 大切な友達 世界にはありふれたもの でも、ありふれているのは、それが本当に大切なものだから 誰しもが持っていたものを、私は持っていなかった そう、彼が来る前まで 大切な長門有希としての日常 大切なSOS団の仲間 そして、大切な朝倉涼子という友達 私はそれが嬉しかった だから、決して離さないと、離したくないと願った そんな、ありふれた大切な物語 -fin-
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例えば、仮に運命と言う名のさだめがあるとしよう それは決してあらがうことはできないのだろうか その問いに答えよう 人は、運命に逆らうことはできる 確実なものは、絶対に存在しない ただ、あがらった先、運命が変わっても それは必ずしもいい結果を産み出すとは限らない そして、あいつはその先にあるものを知っていた 知っていたんだ だけど、あいつは運命を変えたんだ ‐ 朝倉涼子の終焉 ‐ 死っていうのは一体どういうものか、一度は誰しもが考えたことがあるだろう 永遠の別れ 哀しみに包まれた安息の眠り 運命の終着駅 大抵の人間は、死を恐れているだろう 実際、俺も死は好きじゃない じゃあ、もし自分の命が、一週間後、失われてしまうなら、どうする? 俺は、その問いに対して、明確な答えを出す自信がないね その時にならないと、考えても無駄な気がするしな 実感がわかないしな じゃあ、もしそれがあがらえないものだったら? 考えたくもないね そうだろ? 思わず身震いする そんなどうでもいい事を考えながら、暇を潰していた 今は六時限目 もうすぐ放課後だ 昔はあんなにもわずらわしかったのにな 人の環境の変化に対しての順応力は凄いな 自分の身体によくやったと努力賞をくれてやりたい そんな生命の神秘に感動しつつ、俺は時計を見やる SOS団が待ち遠しい ―――5――― ―――4――― ―――3――― ―――2――― ―――1――― キーンコーンカーンコーン 待望の鐘が鳴り響く 終わった! 俺はわけのわからん言葉の羅列の書かれたノートとシャーペンを投げ出した 後はホームルームで終わりだな―――― 「ねぇ、キョン」 なんだ? 後方から言葉がかけられる 俺にでかすぎて投げる程の刺激をプレゼントしてくれた張本人だ 言わずもがな、涼宮ハルヒだ 「みくるちゃんのコスプレ、今度は何がいいと思う?」 なんだ、唐突に 「たまには皆のリクエストも聞いてみたいと思ってね」 そうか 「なるべく簡単なもんにしてね、入手に困るから」 お前なら願うだけで手に入るさ、と思いつつ 考えとくよ と無難な返事をした ごめんなさい、朝比奈さん 「じゃあ、私は先に行くから」 ハルヒがそう告げると同時に、岡部の解散の言葉がかかる ハルヒはいつも通り、一瞬で廊下に駆け出した その元気を少しでいいから分けて欲しい 思わず呆れながら、後を追う 「じゃーな、キョン」 「また明日」 おう、またな、国木田と谷口 クラスの連中に別れをつげ、俺はSOS団へと向かった もはや日課となった活動 黙々と窓際で読書にふける長門 やる前からすでに負けるとわかっているのに懲りない古泉 メイド服姿で部室専用の空気洗浄機役の朝比奈さん そして行動の九割が思いつきと言ってもいいハルヒ 今日は何があるのかね? 期待と不安を抱え、ドアを叩いた ――――結局、その日は何もなかった いや、何も起こらないならその方がいい ちょっと残念な気がするのは気のせいだと思おう 俺はマゾじゃないからな うん、気のせいさ なんてな 長門が本を閉じ、それと同時にハルヒが解散を告げた 荷物をまとめ席を立つ 「じゃ、また明日ね!」 一番にドアから飛び出していくハルヒ またな 「では、僕も失礼します」 古泉が爽やかスマイルで出ていく「着替えるので、どうぞお先に」朝比奈さんが俺と長門に告げる では、失礼します そう言って、長門と部室を後にする 下駄箱を通り、校舎をあとにする 坂道の途中で長門の視線を感じ、振り返る 長門が何かいいたげな視線で俺を見ていた どうした? しばらく沈黙が続く 勘違いだったか? そう思って長門から目を反らす 「気をつけて」 不意に開かれた長門の口 またか? 何かあるのか? 俺が聞くと長門は少し迷うような仕草を見せる ごくわずかだがな 何が起こるんだ? 「すぐに、わかる」 長門はまだ何か言いたそうだったが、沈黙を続けた 生命の危機とかは、ごめんだぜ? 「大丈夫―――― ――――私がいる」 長門とはそのあとすぐ別れた 「じゃ」 またな 何かの違和感を感じる 虫の知らせってヤツだ 嫌な予感がするっていうのか、何か起こる気がした ――――そしてその予感は当たった それは、よかったのか悪かったのかわからないがな ―――――朝日が昇る カーテンが開かれた 寝袋で床で寝ていた俺は眩しさに目を覚ます 「おはよっ」 いつもと違い、俺を起こしたのは妹じゃなかった そいつの無邪気な笑顔は、本当に、ただの少女にしか見えなかった さすが、谷口曰くAAランク+だな、とても殺人鬼の笑顔には見えないぜ? 昨日の朝まで俺の寝ていたベッドから身をのりだし、 朝倉涼子が、俺の顔を覗きこんでいた ……… …… … 俺が自宅の玄関についた時、そこにあいつがいた 私服で、まるで旅行に行ってきたかのような大荷物を抱え、俺を出迎えた 「久しぶり」 朝倉涼子が俺を見て微笑んでいた なんでお前がここにいるんだ? 思わずぎくりとしたが、俺は表情に出さなかった 「あんまり驚いてないのね?」 驚いてるさ 「とてもそうは見えないけど?」 ほっとけ、どうでもいいだろ、んなこと 「まぁ、そうね」 そうだ 今俺が聞きたいことは別にある なんで、お前がここにいる? 先程の質問を繰り返す 「カナダからね、両親残して私だけ帰省したの」 と、いう設定か? 「あはは、まぁ、そんなところね」 そうか 「いやー、理解が早くて助かっちゃった」 んで? 「何?」 俺の家の前に居る理由はまだ聞いてないぜ? 「ああ、そっか」 そうだ 「ふふ」 もったいぶらずに早く言え 「前に住んでたアパートに戻るわけにはいかないでしょ?」 ん? 「でもホテルに泊まるのももったいないじゃない?」 おいおい 「一週間だけ、泊めてくれない?」 おいおい待て待て 普通の男子高校生なら泣いてとびつくようなシチュエーションだな しかし俺は別だ そりゃそうだろ? 朝倉涼子だぞ? 次の朝起きたら頭と体が離れ離れ、ってことになりかねん 勘弁してくれよ ほんとにな それに、情報なんたら体の力ならホテルに泊まることぐらい造作もないだろうが 長門のところに泊まればいい まぁアパートの住人が朝倉が戻ったのをききつけ、どうやって引越し屋も呼ばずに全ての荷物を運び出したか聞かれたりしたら困るのだろうか ならなおさら知り合いの誰もいなさそうなホテルに泊まればいいじゃないか 「……」 それに俺は自分の命を二度も奪おうとした奴と一週間も過ごす勇気なんてない そんなことになったらうまく死を回避できてもプレッシャーで俺の精神は崩壊しかねん ムリだ もう一度だけ言う、無理だ 「……そっか」 はっとして見上げる そこに立っていたのは俺の知っている殺人鬼でも、谷口曰くAAランク+の美少女でもなかった まるで大切な人に裏切られたかのような、寂しげな顔をした少女だった 「そうだよね」 え? 「迷惑だよね」 …… 朝倉はほんの少し ほんの少しだが、瞳が潤んでいる こいつにも感情ってのがあったのか そりゃそうか、じゃなきゃクラスで人気者にゃあならんしな 「長門さんにプロテクトかけてもらったけど、実際私も自信ないしね」 長門は知ってたのか 「そりゃそうよ、同類だもん」 …… 長い沈黙が場を支配する 朝倉は今にも泣き出しそうだ やばい、さすがに良心にちくちくくる はたから見ればいたいけな少女を追い出そうとする血も涙もない鬼畜生にしか見えそうもないな 幸い人は周りにいないが そして沈黙を破ったのは、意外にも俺のほうだった そういえば、まだ戻ってきた理由を聞いてなかったな 「え?」 急に声をかけられあわてる朝倉 なんでお前は長門と違ってこんなに人間らしいんだよ 俺は落ち着いて質問を繰り返した 「え、ああ、戻ってきた理由、ね?」 そうだ、それを聞かせてもらってない 「もう一度ね、チャンスを貰ったの」 チャンス? 「長門さんのバックアップとしてのね」 …… それと、俺の場所に泊まろうとする理由は? 「………」 再び黙り込む朝倉 どーした? 「迷惑?」 そう言って上目遣いに俺に視線を送る朝倉 やばい 正直俺も健康な男子高校生だ こんな視線を送られたらほんとにどうしようもない だが、俺は理性を総動員した だからってなぁ─── 「あ、キョン君おかえりー!」 俺は言いかけた言葉を飲み込むしかなかった 妹が玄関を開け俺にとびついた なんて間の悪い奴だ もし神様が居るなら恨むませてもらう 「あれ?お姉さんだーれ?」 妹が朝倉の存在にきづいた そして当然のように浮かぶ疑問を語る 「私は朝倉涼子」 「涼子ちゃん?」 「そうよ」 妹の疑問に答える朝倉 「キョン君のお友達?」 妹は俺を見た そして俺は心底まいったのか、何を血迷ったのか、朝倉に助けを求める視線を送ってしまった そのせいで朝倉の表情をもろに見てしまった 朝倉は、眉をしかめていた どこか寂しそうなその表情を見て、俺はとっさに言ってしまった 「ああ、友達だ、元クラスメートだ」 「そうなんだ」 ちょっと後悔したね でもその時の朝倉の顔は、とても嬉しそうだった そしてなし崩し的に、妹に推されるように、朝倉は俺の家に入っていった もしかしたら、任務のためにただひたすら活動していたのかもしれない 人気者になったのも、ハルヒに近づいても怪しまれなくするためだったのかもしれない もしかしたら、本当の意味での友達を朝倉は持っていなかったのかもしれない そして、本当は俺を、手にかけたくなどなかったのかもしれない でも、感情を押し殺して─── そこまで思うと、なんか自分が無性に情けなく感じた 無理もないことだと思うが、俺は命を狙われたというだけで(それで十分なのかもしれないが)、朝倉を拒絶していた そして一度もまともに朝倉を見たことがなかった そういえば、クラスにいた時のあいつも、常に周りのために活動していて、自分のことは後回しだった気がする 本当は、ただの殺人マシーンじゃないのかもな 少なくとも、長門はそうだからな 玄関で靴を脱ぐ朝倉に対して俺は口走っていた あとで後悔してもいいや、もう気にしない こいつの本音を聞くいいチャンスかもしれないしな 朝倉── 「え?」 わかった 「何が?」 泊まれよ 「─────ありがとう」 俺の家族ってなんでこう人づきやすいがいいっつーか、物分りがいいんだろうな? 事情を説明し、朝倉が泊まることをいとも簡単にオーケーを出した母親 そしてずっと嬉しそうに朝倉にまとわりついていた妹 なんとなく微笑ましくなったね 朝倉が俺の命を狙ったことがなければ、もっとよかったんだがな あまり部屋数にゆとりがなかったために、朝倉は妹の部屋で泊まることになりそうだった…が なんでだ、おい 「ごめんね、ベッド借りちゃって」 まぁ寝袋で寝るのは別に構わないんだが 「そう」 俺が言いたいのはそういうことじゃない なんで素直に妹の部屋に泊まらなかったんだ? 「おねがい」 両手をあわせ、微笑む朝倉 反則だな、というかお前多少卑怯じゃないか? 「えへ」 舌を出していたずらっ子の顔をする朝倉 お前笑顔のバリエーションありすぎだろ 古泉といい勝負ができるんじゃないか? 「お話もしたかったし」 まぁ、それはいいが、ちょっと長門に連絡するぞ? 「なんで?」 プロテクト、だったか? 直接長門の口から聞かなきゃ信用できんからな 「あら、嘘ついてるんだったら、あなた今頃死んでたわよ?」 そうだろうな、だが用心にこしたことはないだろう 「信用ないわね、私」 人の命を狙っといてよくもまぁ 「いいじゃない、過去のことなんだし」 過去のことですますな あれは軽~くトラウマもんだぞ 「あはは、冗談よ」 俺は携帯を持って、廊下に出た プルルルルルル…… ガチャッ 長門か? 俺だけど 『何?』 朝倉のことなんだが 『……』 知ってたのか? 『……』 電話の向こうで長門が頷く気がした お前のバックアップだって言ってたが 『そう』 そうか 『私が推した』 は? 『だから彼女になった』 ちょっと待て、マテマテマテ お前が彼女がいいって言ったのか? 『……』 確かにお前とは馴染みらしいが 俺はあっちの世界の朝倉と長門の関係を思い出していた 『ごめんなさい』 長門の声に少し申し訳なさそうな雰囲気が混じっていた いや、まぁ、長門がそれがいいって言うなら、いいんだが 『そう』 少し安堵したような声だった たぶん俺に怒られると思ってたんだな 大丈夫なのか? 『?』 前みたいに俺の命を狙ったり、とか 『それは大丈夫 現在急進派は動きが極端に制限されている』 長門は続ける 『もし一週間の任務期間中に急進派が優勢に立っても大丈夫 私が直接朝倉涼子にあなたに危害を加えられないようにプロテクトをかけた』 さっき朝倉が言っていたのはそのことか 『それに』 ん? 『プロテクトをかけるように提案したのは彼女』 なんだって? 『朝倉涼子は本来、誰かを傷つけることを好いてはいない』 …… 『ヒューマノイドインターフェイスのベースは人間、だから個々に多少の個性がある』 それはわかるが 『そしてあなたを殺そうとした時、朝倉涼子は完全に自我を崩壊させられていた』 何? それは急進派が、あいつを無理矢理ってことか? 『そう』 そうか、ありがとな そう言って俺は携帯の電源を切った 少し怒りがこみ上げてきた 朝倉も長門も統合なんたら体がいないあっちの世界では、普通の人間だった そのことを知っている俺は余計腹が立った 統合なんたら体がどれだけ偉いが知らんが、他人の心を無断で壊す権限があるのか? 決めた 俺は勢いよくドアを開けた その勢いで朝倉は目を見開いていた ああ、お前は確かにただの人間だ、こうしてる限りでは、な 「どうしたの?」 朝倉に近づく 俺はそうとう怖い顔をしてたんだろう、朝倉は少し不安そうな顔をしていた その顔を見て、ますます決意が固まる 俺は何を血迷ったのだろう だが後悔はしなかった むしろそうしないといけない気がした こいつは、本当な孤独だったんだろう 俺は朝倉を抱きしめていた 「あ」 細い、力を入れたら壊れてしまいそうな、そんな華奢な女の子の体 俺は決心し、その決意を言葉に出して伝えた 「俺が、お前を守ってやるよ」 しばらく抱きしめ、俺は腕をといて朝倉の顔を見た 朝倉の瞳が少し潤んでいたのは、見間違いじゃないだろうな カーテンを開ける 久しぶりの朝日 私は帰ってきた、そんな実感を感じる 太陽の光が、とても暖かかった とても懐かしかった 私、まだ生きてるんだ 嬉しかった それが、すごく嬉しかった すごく、すごく嬉しかった 『俺が、お前を守ってやるよ』 昨日の、彼の言葉がメモリに反芻される ありがとう─── 彼に聞こえないように、そっと呟く 「う…ん」 彼が目を覚ました あ、まぶしかったのかな? 妹ちゃんの話では、朝に弱いはずなのに 「………」 寝ぼけ眼で私を見る彼 まぶしいのか、目はほとんど閉じているけど おはよっ 私はベッドから身を乗り出し、彼の耳元で囁く まるで、恋人みたい ちょっと恥ずかしいかもね なんてね 彼が私を見た 沈黙が続く その沈黙は長く感じられたけど、とても優しく感じた 「ああ、おはよう」 彼といられる一週間が、今始まった ─── 「じゃ、行ってきます」 いってらっしゃい 彼は学校へと向かう あとに一人残された私 私は学校へは行かない 「ごめんね、涼子ちゃん」 いえ、このぐらいは 彼の母親の母親の家事の手伝いをする もし私がただの人間だったら、していたであろうこと 私がただの人間だったら、将来、誰かと結婚して、こうやって─── 何かがこみ上げてきた 「どうしたの?」 ぁ、な、なんでもありません 恐らく顔に出てしまっていたのだろう 「少し休んだら?」 はい、ありがとうございます じゃあ、お言葉に甘えて…… 彼の部屋に戻る 部屋に入ると同時に静寂が私を包み込む 私はベッドに倒れこむ 彼の匂いを感じる 私を、守ると約束してくれた、彼の匂い 嬉しかった 彼の言葉が そして、同時に、悲しかった 彼にはまだ伝えていない でも、伝えないといけない 私がここにいられるのはこの一週間だけ それをすぎたら、私は消えなければいけない じゃないと、私は…… 今だけは、泣いてもいいよね? 誰もいない彼の部屋 彼の匂いにつつまれて 私は、泣いた 静かに、咽び泣いた 誰かに優しくしてもらったのは、初めてだった ずっと、ずっと孤独だったから 人気者を演じてはいても、本当の私を誰も知らなかった 本当の私を見たら、皆私を嫌ってしまっただろうから でも、彼は違った 彼は、本当の私を知った 知ったのに、私に優しくしてくれた 私が泊まることを許してくれた とても嬉しかった 本当の、脆弱な私を、受け入れてくれたから 私を守ると、言ってくれたから でも、その彼とも、すぐに別れなければいけない 『あなたはとても優秀』 あの時、長門さんに言われた言葉 ────長門さん、私は、全然優秀じゃないよ 自分の感情を、押し殺すことができないから だから、私は優秀じゃない あなたほどに、冷静でいられない 長門さん、あなたが羨ましい もし、長門さんが私の立場にいても、彼女なら淡々と過ごすだろう―――― ────私は、人形になりきれなかった人形 ────私は、人間には決してなれない人形 ────私は、感情を持ってしまった人形 ────私は、できそこないの失敗作の人形 ────私は──── 静寂につつまれ、窓から陽の光が差し込む、温かな部屋 私の吐息と、時計だけが、音を刻む 誰にも邪魔されることなく、私は感情をさらけ出していた ……一人で、誰にも知られることなく…… 時を刻む音の布団の中で、私は呟いた そしていつしか、私はそのまま眠ってしまっていた──── ……… …… … SOS団の活動が終わり、家についた時、すでに外は真っ暗だった ふぅ、疲れた 「キョン君、おかえりー!」 おう、ただいま お前はいつになったらお兄ちゃんって呼んでくれるんだ? 「おかえり」 ただいま、あれ?朝倉は? 「あんたの部屋で寝てる 間に家事手伝ってくれたんだけど、なんか具合悪いみたい」 具合が悪い? あいつがか? 俺は階段をのぼって、自分の部屋に入った あいつは俺のベッドの上で寝ていた その顔は、ただの女の子だ なんども言うようだが、谷口の個人的美的ランキングAAランク+なだけはある いや、AAAランクと言っても過言じゃないかもな それだけの魅力をこいつは持っている 行動は別だがな? 俺は薄暗い部屋の明かりをつけた 「う…ん」 起きちゃったか? 「ぁ……ぉかえり」 おう、ただいま─── 俺は正直驚いた 朝倉の目は赤く、まるでさっきまで泣いていたようだった 目元からは、確かに涙の流れたあとがあった 俺の視線に気がついたのか、朝倉は慌てて目元を拭う 泣いてたのか? 「え、あ、うん、まぁ」 あわてて答える その仕草に不覚にもくらっと来てしまった 油断してると惚れてしまいそうだな まぁ俺には朝比奈さんや長門で慣れてるからそれはないが あ、ハルヒは別だぜ? 「あ、今何時?」 ん?6時半過ぎ…か 「やばっ、お母さんの手伝いを」 いいよ 立ち上がろうとする朝倉の肩を押さえ、座らせる すると朝倉はキョトンした顔で俺を見上げる その表情は反則だ 休んでな、具合が悪いんだろ? 「あ、もう大丈夫だから」 本当か? 「うん、ありがとう」 ばつの悪そうな顔で朝倉は部屋を出て行った なんか今は俺と二人きりは落ち着かないらしい なんでだろうか まぁいい 今は朝倉が出て行ったから着替えられる、か まだ制服だったことにきづき、俺はズボンを脱ぎ、上着を脱いで―――― 「あ、そうそう、洗濯物の───」 なんてタイミングで戻ってくるんだこのやろ! 見る見る顔の赤くなる朝倉 羞恥って感情もちゃんとあるんだな、こいつには そのせいで余計に恥ずかしさが増す 顔から火が出そうだ 「あ、その、ごめん!」 そう言い残し朝倉はドアを勢いよく閉めて階段を駆け下りた …やれやれ ……… …… … やっちゃったー、どーしよ 私は彼に洗濯もので彼に自分のを運んどいてという彼のお母さんからの伝言を伝えようと戻った そしたら彼が下着一枚で立っていて着替えるところだった やっちゃったやっちゃったやっちゃった そうよね、普通なら帰ったら着替えるわよね ノックしない私のほうが悪いんだもんね ヤバい、私顔真っ赤じゃない? 皆とご飯食べてるのに…… やだそんな顔で見ないでよ 「どーしたの涼子ちゃん」 なんでもないよ、妹ちゃん 「顔真っ赤だよー?」 気のせいよ、大丈夫だからね? あー恥ずかしい 昨日の今日であんなことしちゃうとか あーヤバい なんでこんなどーでもいい感情ついてんだろ 夕食をかなりのスローペースで食べて、私は居間に行った とにかく彼と顔を合わせられなかった 恥ずかしくて 長門さんなら平気なんだろうな 私やっぱりダメダメね 少し落ち着いてきた 後で謝っとこ 「朝倉ー風呂空いたぞ」 うん、ありがとう 風呂あがりの彼が私の顔を覗く 何? 「いや、お前ほんとにこうしてるとただの女の子なんだな」 なっ!? 落ち着いたはずなのにまたドキドキしてきた お風呂入ってくる そう言ってその場を立ち去る 彼は確信犯なのだろうか もお── 思わず口から不平が出る 『女の子なんだな』 当たり前じゃない? 確かに、私は彼と同じ大多数の人間と同じとは言えないけど 性格だけなら、普遍的な女子高校生なんだし… まあいいや お風呂入ってさっぱりしよう ─── 「元気出たようだな」 え、なにが? 彼が部屋で聞いてきた 「さっき泣いてたようだったから」 あ、うん、もう大丈夫 「そうか」 うん 「何かあったら俺に言えよ?」 ありがとう でもね? その優しさのせいで、私は泣いたんだよ? そう心の中で呟いた 彼には、まだ伝えられていない 伝えなきゃ、伝えなきゃ 『お前を守る』 その言葉は、私にとっては残酷な優しさ 嬉しかったけど 悲しみもその分増える… あのね… 「ん?」 …言わなきゃ、伝えなきゃ… 静寂が場を支配する 昼間みたいな優しい静寂とは違う この静けさは、私の心臓をキリキリと掴んでいく そして少しずつ握りつぶしていく 「朝倉?」 はっ、として頬に手をやる 濡れていた なんか、私、戻ってきてから泣いてばかりの気がする しかも、ほとんどが彼のせいで 「どうした?」 彼が心配そうな顔で聞いてくる ごめんなさい、なんでもない 嘘 嘘なの なんでもないわけじゃないの、だけど彼には伝えられない 彼に、伝えられる、わけがない 私は知っていた 黙っていることは、その時が来た時、ただ彼を傷つけるだけ でも、今伝えて、愕然とする顔も、見たくはないの 矛盾 矛盾してる 私は、やっぱり失敗作 「朝倉───」 急に、私に近づく彼 あ── また、彼が私を抱いてくれた その腕がとにかく暖かくて 一週間後、消えてしまうというのに 私は、偽りの命だというのに その暖かさは、全てを忘れさせてくれた 彼の胸に、頭をうずめる 私の涙が、彼の服を汚す ──ありがとう── 私は再び呟いた その言葉が、私にできる精一杯の、恩返し 今私が言葉にできる唯一の、真実 ──ありがとう── そして私は彼の腕の中で眠りに落ちていった ……… …… … 朝倉が家に来てから、2日目の朝を迎えた 泣きつかれたのだろう、俺が朝食を食べて学校の準備をしている最中、やっと起きた 「あ、今何時?」 んー、7時半ぐらい 「学校行く時間ね」 ああ、今ちょうど準備が終わったところだ 「そう」 少し寂しそうな顔をしていたのは気のせいじゃないだろう 恐らく俺が学校に行ってる最中、孤独と戦っているんだろう 母さんは朝倉の本当の姿を知らない 俺は気づけば、朝倉に提案をしていた なぁ、久しぶりに学校を覗いてみないか? 「え?」 キョトンとした顔で俺を見る クラスの皆もお前に会えたらすっげー喜ぶと思うぜ? 「でも、こんな急に…」 帰省してて、急に懐かしくなって顔を覗かせた、で十分だろ 「……」 行こう、家にいても暇なだけだろ 「いいの?」 何が 「迷惑じゃない?」 迷惑? なんでだよ 「……」 今は自分のこと考えろ、な? たまには、他人に甘えてもいいんだぜ? 少なくとも、俺のところにいる間は、俺に甘えろ ぶっちゃけ、今の俺には朝倉は妹みたいな存在だ 妹につらくあたる兄なんていないだろ? 「あり、がとう」 朝倉は大急ぎで飯を食べて準備をした さすがに制服はなかったから私服での訪問者ってことになるだろうな でも、それでも十分だろ? こいつには孤独は似合わない やっぱ教室で人に囲まれて笑っているのが似合うな 朝倉、本当のお前のことを知らなくてもな クラスの皆は、お前が思っている以上にお前のことが好きなんだぞ 朝倉が準備するのを玄関で待ち、二人そろって家を出る 「なんか恋人みたいだね」 朝倉が少し頬を染めながら呟く ああ、そうかもな 確かにはたから見ればそんなふうに見えるかもな ハルヒに見られたら、あいつどんな顔すんのかな なんてな 今は皆は関係ない 少なくとも、今の朝倉を孤独から救ってやれるのは俺だけなんだから 長門も、できると思うけど 俺は朝倉を助けてやりたいから 朝倉 「え?」 行くか 「うん」 微笑む朝倉 思わずこっちもつられて笑っちまう 本日は、快晴なり ──── ちーっす 「おっす!キョ──」 「あれ?朝倉さん?」 固まる谷口と冷静な国木田 開けるのはチャックだけにしとけ、口をしめろ谷口 「久しぶり」 朝倉が満面の笑顔で答える 「え!?嘘!朝倉さん!?」 「どこどこ?」 急にクラスの女子に取り囲まれる朝倉 お前にはそのほうが似合ってるさ ふぅ── 俺は肩の荷がおりたような気分自分の席についた 後ろを見るとハルヒが口をぽかんと開けて朝倉を見ている 谷口とリアクションがおんなじだぜ? ハルヒ 「え、な、何?」 口開けっ放しだぞ 「な!関係ないでしょんなの!」 そーだな 「キョン君」 いつの間にあの囲いを脱出したのか、朝倉が目の前に立っていた 「私、授業の間は適当にブラブラしてるね」 ああ、わかった 「そろそろホームルームだね、じゃね」 朝倉はそう言って教室から出て行った 「なんであんた、朝倉さんと」 ハルヒが話しかけてくる ん?俺んちに泊まってるんだよ 「聞いてないわよ!?そんなの」 言う必要がなかったからな ハルヒが席から立ち上がって俺の襟を掴む ちょっと力入れすぎだ、苦しい…… 「何よ!謎の転校をした朝倉さんが戻ってきたのなら、十分SOS団に関係してるじゃない!」 なんでだよ 「というか、泊まってるって何!?あんた朝倉さんと暮らしてるの?」 あー、そのな? 大声で怒鳴るな、周り視線が痛いから おい、谷口、殺気が漏れてるぞチャックから 一週間だけだよ、他にあてがなかっただけだ 「ホテルにでも泊まればいいじゃない!」 金がもったいないだろ? 一週間もホテルに泊まるぐらいなら俺だって知り合いの家に泊めてもらうさ 「そこでなんであんたんちなのよ?」 実際朝倉のあてっつったら長門か俺しかいないだろうからな 長門のアパートに戻ったら住人からいろいろ聞かれるに違いない だけどそれを説明にハルヒに言うわけにはいかない その、な? 「何よ」 こうなったら口からでまかせだ 朝倉があわせてくれることを祈ろう そう願い俺は真っ赤な嘘を語った ───実はな、朝倉とは遠い親戚なんだ 「へ?」 呆然とするハルヒ ちょっと突飛過ぎたか? 生命の起源すら違うからな、俺と朝倉は 信じられないのも無理はあるが 「そっか」 待て、そんなすぐ納得するのか 「違うの?」 いや、そうだが ハルヒは俺が説明したら納得したように席に座った ハルヒにしてはものわかりがいいな 俺は掴まれた襟を正した あとで朝倉に口裏を合わせてくれるように頼んどくか 朝倉は休み時間になるたびに教室に顔を覗かせた ハルヒは朝倉に大量の質問を浴びせかけた さすが朝倉、と言っておくか ハルヒの質問の一つ一つに、矛盾点の見当たらない完璧な答えを返す そのやりとりに俺は舌を巻くしかなかったね 結局朝倉は俺の母親の従兄弟の叔母の姪の娘の従兄弟の娘、ということになった よくそこまで一気に思いつくね 断言できる、俺はそんな設定覚えることはできん ハルヒもさすがにそこまでの事実確認は不可能と諦めたのか、おとなしく席に座る 退屈な授業中、俺は朝倉が校庭の隅のベンチに座り本を読むのを眺めなら、時が流れるのを待った ────キーンコーンカーンコーン──── 最後の授業が終わり、俺は荷物をまとめ始める 「キョン!今日は朝倉さんも臨時団員だからね!ちゃんと連れてきなさいよ?」 ハルヒは一気にそう捲くし立てた そしてまだホームルームがあるのにもかかわらず、教室を飛び出る はやすぎだ、おい ホームルームが終わり教室を出る 「キョンー、今度お前んち遊びに行っていいかー?」 「こんたんまるわかりだよ、谷口」 そうだな、国木田 それに谷口、あいつはあと5日しかいないぞ? 「そうか、残念だ」 ああ、んじゃな 「また明日、ほら谷口、行くよ」 国木田は谷口のおもり役なんだろうか 思わず苦笑が漏れ出る 「お疲れ」 他のクラスメイトにも挨拶を返しながら 廊下で朝倉が待っていてくれた 朝に言われたみたいに、 ほんとに恋人っぽい感じだな 俺がそう呟くと朝倉はちょっと頬を染める その仕草がまた俺の脳を揺らした─── 「遅い!私が来てから10分も経ってるじゃない!」 ハルヒ、お前はホームルームの存在を知っているよな? 「いいじゃない、別にホームルームぐらい出なくても進学できるんだから」 何か大切な話があるかもしれないだろうが 「そしたらあんたが教えてくれればいいわ」 俺はお前の伝書鳩じゃない 「私は団長よ?団員が必要な情報を届けるのは当然じゃない」 俺とハルヒのいつものやり取りを朝倉は笑顔で見ていた 「あら、朝倉さん、来てくれたのね!」 ハルヒが団長席から飛び降りて朝倉を捕まえる 「朝倉さん!コスプレしてみる気はない?─── ────そんなこんなで本日の活動は終了した 内容はめんどくさいので省かさせてもらう たいしたことはしてないさ ただ部室専属メイドが二人に増えただけだ 俺は今家路を一人で帰っている 朝倉は長門と少し話をしてから帰るらしい 朝倉のことだから道に迷う、ってことはないだろう さっさと帰って朝倉が帰ってくる前に着替えるか 二度も着替えを覗かれちゃたまらんからな ……… …… … 「あなたはまだ、彼に話をしていない」 うん、伝える勇気が、なくて 「そう」 もうちょっとだけ、待って 「いい、それであなたがいいなら」 うん、ごめんね、長門さん 「いい」 一般人としての彼から得た涼宮ハルヒの観察データ、この2・3日分、確かに渡したからね 「受け取った、このまま情報統合思念体へと送信する」 今の私は長門さんの完全なバックアップ 彼女が必要としている情報の収集を手伝うだけ それ以上の権限を私は持っていない 少なくとも、この一週間は、だけど 長門さん 「何」 私、怖くなってきちゃった 「……」 一週間後、彼と別れないといけないって思って、怖くなったの 「そう」 ごめんね、あなたに言ってもどうしようもないのにね 「いい」 沈黙が時を刻む 私はただ待っていた 情報の交信を終えた長門さんが不意に立ち上がった そして私を見た 「朝倉涼子」 え? 「あなたはとても優秀」 …… 「信頼している」 そう言って、長門さんは立ち去った その言葉で、私は少し救われた気がした ありがとう、長門さん わずかな声で呟き、私も場を立ち去る もう外は暗い 校舎を出て、空を見上げる 満面の星空 夜空に浮かぶ月 あの月が満月になる夜、私は…… このまま感傷にひたっていたら、また泣いてしまうような気がして、私は家路を急いだ 彼の待つ、彼の家へ 私に優しくしてくれた、彼の元へ 温もりをくれる人の所へ ……… …… … 今日は土曜日だ── あのあと帰ってきた朝倉と飯を食いながら談笑し、テレビを見て、寝た 帰ってきたときは少し寂しそうなふっきれたような顔をしていたのだが、寝る頃には笑顔に戻っていた 「おはよ」 昨日とは違い、元気に目覚めた朝倉 その気配で、俺も起きる おはよう 「お母さんの手伝いをしてくるね」 働きもんだな、お前は 向こうの世界だと長門のために鍋作って持っていくような奴だったしな どっかの暴走機関車に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいね 誰とはいわんが ───SOS団を立ち上げて、いつの間にかかなりの時間が流れた その時間は俺に何を与えたんだろうか その間に俺は何を、知ることができたのだろうか 徐々に変わりゆくハルヒと戸惑い─── 長門の本当はとても優しい心─── 朝比奈さんの心情、そして役立ちたいという願い─── 古泉との信頼、友情(?)そしてその本音─── 谷口、国木田、鶴屋さん達皆との思い出─── そして、SOS団として積み重ねた日々─── でも、俺は朝倉のことは何も知らなかった 知ろうとすらしてやれなかった 本当はとてももろく、壊れやすい心 一人秘めた孤独と戦い、自分の意識を押し殺そうとする悲しみ 決めたんだ、俺は朝倉を守ってやるって 俺は、俺自身に、誓った 誰も本当のあいつを知らない だから、俺しか守ってやれない 長門も知ってるか 向こうの世界での二人の関係からそれがわかる いざとなったら長門と二人で、朝倉を守ってやればいい 少なくとも、朝倉が俺と過ごす一週間の間だけは、な このときの俺は、 ────なぜ一週間だけなのか─── 不覚にもそれを深く考えなかった 考えて、やれなかった 「いってきます」 準備の終わった俺は、朝倉を後ろに乗せ、自転車でSOS団のいつもの集合場所へと向かった 優しくしがみつく朝倉の腕は暖かく、それでいてか弱く感じた 「初めてだな、こうやって自転車に二人乗りするの」 そうだろうな 宇宙人じゃなくてもあまり機会はない気はする まぁ、俺は夏にすでに一回、正確には何千回と経験しているが ふと、腕の力が強まる 「ずっと、こうしてられたらいいのにな」 不意に呟く朝倉 別に、一週間が過ぎても、たまに遊びにぐらい来てもいいんだぞ? たまに学校に顔覗かせればクラスの皆も喜ぶだろうしな 「うん……それムリ」 久しぶりのセリフ あの時はお前に殺されるところだったがな だけどあの時とは違い、暗く、沈んだ声 ──朝倉? その声色に思わず声をかける俺 「何?」 いや、なんか声が落ち込んでいる気がしたから 「え?あ、やだ、そんなことないよ」 そう、か? 「そうそう、ちょっと嬉しかっただけ」 それならいいんだけど 「うん」 いつもよりは早く家を出た、にもかかわらず、俺は時間ぎりぎりで集合場所に辿り着いた 「遅い!罰金!」 んだよ、今日はちゃんと間に合っただろ? 「でも私が来たときはすでに皆いたわよ」 いーじゃねーかそれぐらい 「団長を待たせるなんて百年早いわ!」 「ごめんなさい、涼宮さん、私を乗せてたせいでちょっと遅れちゃったの」 「う、ま、まぁいいわ今日は朝倉さんの顔に免じて許してあげる、もちろん昼はあんたのおごりだけどね」 いつものような流れで俺は今日も財布係に任命された まぁ朝倉のおかげでいつもよりハルヒの怒号が短めだったが ──あとでお礼ぐらい言っとくか ……… …… … 眩しい程に照りつける太陽の下 髪を撫で指の合間をすり抜けていく爽やかな風 人影もまばらな昼過ぎの公園 「ほい、買って来たぞ」 おかえり 「リンゴジュースでよかったんだよな」 うん、ありがと 伸びやかな風に包まれた午後 午前中、涼宮さんと二人でSOS団の哨戒を終えた後、皆で昼食をとった そして長門さんのはからいで今、私は彼と二人きりでベンチに座っている 涼宮さん、すごい元気だった 思わず本音が出てしまう 「大変だっただろ、あいつと二人きりなんて」 ええ、でも楽しかった 「そりゃよかった」 実は女子ともあんな感じで出歩くの初めてだったんだ 「へぇ、そりゃ意外だな」 そう? 「クラスにいた頃、女子達と出歩いたりはしなかったのか?」 ううん、理由つけて断ってた 「なんで?」 なんでって、そりゃ、長門さんの手伝いとかもあったから それにいつでも動けるようにしとかなきゃ何か突然の変革があったら困るでしょ? 「そりゃそうか」 そうよ 彼が微笑む つられて私も… 静かな時間が流れていく 彼と二人、川のせせらぎを聞きながら時を刻む 不意に彼を見る 遠くを見ながら思考にふけっている 遠くを見つめる彼の顔 優しくて、頼もしい彼の顔 「ん?どうした?」 私の視線に気がついたのか、ふと声がかかる 私は、無言で彼にもたれかかる 「朝倉?」 もうちょっと、このまま 「…わかった」 不意のわがままも聞いてくれる 本当の自分を見てなお受け入れてくれる それが何より嬉しくて、つい甘えてしまう 涼宮さんもきっと彼のこんな所に惹かれたんだろうな… 羨ましい 長門さんもきっと幸せなんだろうな 朝比奈さんも、古泉くんもきっと── 彼はとても不思議 近くにいると全ての葛藤を忘れさせてくれる 風、そう、彼は例えるなら、風 時には心を揺さぶる強い風 時には身を守ってくれる暖かい風 時には涙をぬぐってくれる優しいそよ風 彼の風に身を任せながら、私は心安らかになる 風の一部として取り込まれていく 私は、彼のことが好きなんだろうか――― ふと頭に浮かぶ疑問 きっとそうなんだろう ちょっと頬を染める 長門さんも涼宮さんも、朝比奈さんもひょっとしたら古泉くんも 彼にはそれだけの魅力がある どんな醜い部分もまとめて守ってくれる たとえ何もできない時でもそっと手を握ってくれる そんな頼りがいが彼にはある ありがとう そう心の中で呟く いつも言ってない?私 自然と微笑がもれる 「朝倉」 突然かかる声 何? 私は顔を彼の肩に乗せたまま呟く 「……」 長い 長い静寂 どうしたの? 顔をあげて彼を見た 「いや、なんでもない」 ? 首をかしげる私 すると彼は微笑んで呟いた 「おもしろいなお前」 へ? 彼が私の頭を撫でる 暖かい掌で私は包まれる 言葉にはされなかったけど 何となくわかる 私は大事にされている ハレモノに触るような不器用なものではなく まるで妹を可愛がるようなもの こんなふうにしてもらえるのも、あと4日…今日を抜いたら3日 時は刻まれていく─── 彼といられるリミットが少しずつ忍び寄る でも、今は、今はもう少しだけ、彼のそばに その願いが、許されるのなら だって、彼は笑っていてくれるから あと三日── 夜空の中の月明かりが私を照らし出す 私は一週間というリミットの中で 時を刻むこと許された者 終わりゆく消えゆくその時まで 彼のそばで笑顔を感じていたい そしてそれは、彼が許してくれたこと もう少し、その優しさの元、私は彼を感じていたい それが、別れの時に私の身を切り裂くと知っていてはいても──── 「朝倉?」 カーテンを開けて夜空を見上げる私 目が覚めてしまったのだろう 私に声をかける彼 「眠れないのか?」 眠りたくないの そう、正直に答える この優しい時間の流れの中、少しでも生きていることを感じていたい それが、私の願いだから 「まぁ、明日は何の予定もないからな」 今は晴れて、どこまでも見渡せる満面の星空 でも明日、日曜日は雨─── 近づく別れの時 彼にはまだ話していない 多分、彼は私が一週間を過ぎてもなんらかの形で長門のサポートを続けるのだと思っている でも、それは違う 私は消える 課された使命を終えるための一週間 それを終えると共に、私は消える 消えなくてはならない ───怖い 恐怖 この日常から消えることへの恐怖 悲哀 彼と別れなければいけないことへの哀しみ なぜ、私には感情が持たされているのだろう 私も、長門さんもなぜ、こんなものを持たされているのだろう 便利だから? 人とコミュニケーションをとるのにそのほうが便利だから? 私は、普通の人間に生まれたかった 普通に生まれて 親に甘えて 友達を作って 恋をして 結婚して 子供を作って でも、それは叶わぬ願い 涙を流すのは、3度目?4度目? なんで私は再び生きているの? なんで? ねぇなんで私なんか作ったの? 誰か、答えてよ、お願い! 私を、私を誰か、助けて!守ってよ! いや!いやよいやよいやよいやよ! いやなの!私は!私は! 消えたくない! 「泣いているのか?」 彼がすぐ後ろに立っていた 「どうしたんだ?」 何、が? 「来てから、ずっと泣いてるじゃないか」 そう、ね 「何か、言えない事があるのか?」 …… 「俺が力になってやる、一人で抱え込むな」 いいの? 「当たり前だ」 なんで? 「なんで、って」 私は振り返り、彼を見つめた 私は人間じゃないのよ? 作られた人形なのよ? 「そんなの……」 それだけじゃないわ 私はあなたを殺そうとした 涼宮ハルヒを悲しませようとした なんで? なんで私になんか優しくするの? 同情なんかしないで! 私をこれ以上――― 「いやだったのか?」 え? 彼は悲しそうな顔で私を見つめる 「俺がやってたことは、意味のないことだったのか?」 ……… 「俺は、誰かが苦しんでるのを見るのがいやなだけだ」 …… 「同情なんかじゃない」 … 「俺は、約束したはずだ」 何を? 「お前を守る、俺が守るって」 なんで? 「俺が守りたいからだ!」 誰のためによ 「俺自身のためだ」 …… 「泣いてる奴を見るのは、好きじゃないんだよ」 偽りのない彼の言葉 「だから、泣くのをやめてくれ」 その言葉が何より嬉しくて 「な?」 それが何より苦しくて 「お前には、俺が、いるから」 もう一度言おう 今度は、心の中で呟くだけじゃくて 彼に直接 ありがとう 私は、再び彼の腕に包まれた そして再び、私はそれを感じた ……… …… … 朝倉が俺の家にいるのもあと3日だけだ 雨の降る日曜日 今日はSOS団の活動もなかった せっかくだから、どこかに出かけたかったな? 「そうね」 雨の降りしきる音の中、家族皆で朝食をとる 「涼子ちゃん、卵焼き一つちょーだい」 「はい、妹ちゃん」 「ありがとー」 いやしいマネするんじゃありません 「まぁまぁ、私は構わないから」 それならまあ、いいんだが あんま甘やかさないでくれよ? 「ちょっとだけだもんねー」 「ねー」 二人で「ねー」するのはやっぱり女の子なんだなと実感する このままは何もない日曜は少しもったいない気もするな どっかでかけるか? 「え?」 どーせ暇だろ? 「でも雨が」 行き先が屋内だったらいーだろ? 「別にいいけど、どこに行くの?」 そーだな それを考えていなかった 「あ」 なんだ? 「予定が特にないのなら、行きたいところがあるんだけど」 ん? 行きたいところ?どこだ? 「図書館」 宇宙人って言うのは本を読むのがすきなんだろうか 「そーじゃないわよ」 んじゃなんで図書館に? 「以前長門さんから聞いてね、どーせだから私も行きたいなっていうか」 長門から聞いてたのか 「うん、だめかな?」 だめじゃないさ 本がたくさんあるなら暇つぶしにもなるだろうしな 「じゃ、決まりね」 いってきます 飯を食って早々と準備した俺達は、家を出て図書館に向かった 雨だったから歩きだったが、たまにはこういうのも悪くはない 「こっちによりすぎじゃない?あなた濡れてるよ?」 構わんよ 母親は買い物に、妹は友達の家に行く、というので必然的傘は一本になってしまったわけで 今俺と朝倉は相合傘をしながら図書館へ向かっている 男子高校生としては喜ぶべきことなんだろうが、あいにく一度ハルヒとやってるからそんなに感慨はわかない 雨の中結構歩いた気がする 1時間後ようやく図書館に辿り着いた 傘を差していたとはいえ、二人とも多少濡れていた 「へぇ、ここが図書館ね」 嬉しそうに周りを見渡す朝倉 来たことないんだな 「来る暇なんてなかったもん」 そりゃそうか 「そうよ」 喜ぶ朝倉を見ていると少し元気になる 濡れた肩を朝倉があらかじめ持ってきていたタオルで拭う んじゃ、俺そっちで待ってるから 「わかった」 そう言って楽しそうに奥へと歩いていく朝倉 俺は適当に近くにあるライトノベルをとり椅子に座る 雨のせいか、人影は本当に少ない おそらく片手の指で数えられる程度だろう 活字という睡眠薬を投与した俺は、徐々に夢の世界へと入り込んでいった 俺は一体どれだけの間寝ていたのだろう ふと目が覚めた 腕時計を見るとすでに午後2時を廻って飯も喰っていないせいか腹が悲鳴を上げる そろそろ帰るか? そう思い立ち、重い腰を上げようとし─── 俺のヒザの上に顔を乗せ寝息を立てる朝倉を発見した 思わず驚いたが、朝倉を起こさないようにじっとする 気がついたが足がしびれている 結構前からこうしているらしい 周りに人が少ないとはいっても2・3人はいる、少し恥ずかしい だがかわいく寝息を立てる朝倉を起こすわけにもいかなかった 10分ほど朝倉の寝顔を堪能していたその時 俺は目の前に座って本を読む人物に気がついた ボブカットよりも短いショート ページをめくる細い指と文字を追う透き通った瞳 そして、そのトレードマークとも言える無表情 長門有希がそこにいた 長門? 「……」 お前、どーしてここに? 長門は本から目を放し、俺を見た 「たまに来る」 そうか 確かにここに来れば山ほど本が読めるもんな 閉館時間になったら借りればいいし 「あなたのおかげ」 え? 「図書館という存在を知ったのは」 ああ、そういえばそうだったな 朝倉の寝息 長門がページをめくる音 雨が窓を叩く音 それらに耳を傾ける俺 どれぐらいの時間がたったのだろう ふと、長門が立ち上がった 帰るのか? 「……」 無言で頷く長門 そうか、また明日な 「一つ」 不意に長門が口を開く 「あなたは、優しすぎる」 へ? 「それは朝倉涼子に対する救いであるのは確か」 …… 「でもそれは、同時に─── ───彼女を蝕む鎖でもある」 長門が一瞬何を言っているのかわからなかった そうだろ? 急に口を開いたと思ったら絶対に言わないだろう抽象的なことを述べる どういう意味だ? 「私は答えられない」 …… 「その答えは、朝倉涼子本人が持っている」 何? 「また明日……」 読んでいた本をカウンターに持っていき、外に出る長門 長門が立ち去ってしばらく、俺は呆然としていた 朝倉を、蝕む鎖? 意味がわからない 救いってのはわかるんだが 蝕む鎖と救いってのは真逆のもんだぜ? 「ん……」 朝倉が身体を起こす 起きたか 「あ、ごめんなさい、上に乗ってた?」 いや、いい そろそろ帰ろう、もうすぐ3時だぞ? 「あ、うん」 昼飯食ってないから腹減っただろ 「そうね、もうぺこぺこ」 じゃ、帰るか 「わかった」 俺は長門の放った言葉の意味を考えていた そしてその言葉の真実に、気づけないままでいた 「どうしたの?」 帰り道の途中、声がかけられる どうやら思案が顔に出ていたらしい なんでもないと嘘をつく 「それならいいんだけど…ケホッ」 不意に咳き込む朝倉 風邪か? 「うん、雨だからね、実は昨日からちょっと調子悪くて」 そうは見えなかったが それにお前らも風邪ってひくんだな? 「ううん、普通は、ケホッ、ひかない」 は?どういう意味だ? 「なんでもない」 ふと朝倉を見る そして、突然の異常に気がついた 朝倉涼子の震える肩 その肌は、明らかに青ざめて見えた おい!朝倉、本当に大丈夫なのか? 「うん、だから風邪だ、ケホッ、てさっき言ったでしょ?」 嘘だ さっき図書館を出たときは全然平気だっただろ? こんな短時間で 明らかに変だ 「大丈夫だから」 そう言って足を早める朝倉 徐々に、セキの間隔が短くなっていっている気がする 本当に、どうしたんだ? 「明日は、エホッ、ずっと寝てたほうがいいわね」 ああ 潤んでいる瞳─── 青ざめた顔─── 歩くのも、今はつらそうだ──── そして 家に着くと同時に 朝倉は 倒れた ……… …… … 迫る最期の時 弱っていく身体 終わりが近いことを感じる どうしようもない 必死で私を看病してくれる彼 学校を休んでまで、私の近くにいてくれた彼 今日は私が彼といられる最後の日 私は、明日、消える 「朝倉……」 私を呼んでくれる彼 手を握っていてくれる彼 嬉しかった まだ、私を見捨てないでいてくれる彼が そして悲しかった 彼に応えることのできない自分が 私はなんて自分勝手な女なのだろう 私は必死に身体を起こす 「どうした?」 彼は驚いて私に尋ねる ――――ごめんね? 私は呟く 「なんでお前が謝るんだ?」 私は、あなたに応えられない 「は?」 私は、あなたに何もしてあげられない 「何を言って……」 ごめんね、今まで黙ってて ――――私は、このまま消えちゃうんだ 私の手を握る彼の手に力が入る 彼は驚愕で目を見開く 「そんな、だって」 ごめんね? もっと早く伝えなきゃいけなかったのに―― もっと早く伝えられていたら―― ごめんね? 私、怖かったの ずっと、ずっと怖かったの 言ったら、伝えたらきっとあなたは失望したから それで傷つくあなたを見たくなかったから ごめんね? 「朝倉………」 本当にごめんね? 「………」 ごめん 「……」 ごめん………なさい 「…」 私、私―――― 本当は消えたくなんてない! もっと、あなたの傍にいたかった! 本当はもっと、あなたを感じていたかった あなたの笑顔を眺めていたかった 「朝倉………」 私ね? 本当はね? 「朝倉!」 あなたが好きだったの! ……… …… … 朝倉が、自分の想いを打ち明けると同時に 俺はまた朝倉に抱きついていた 俺には、他に何もしてやれなかったから 静寂が二人を包む 朝倉のむせび泣く声だけが 部屋に響き渡る 俺のシャツの胸元が朝倉の涙で濡れる なんで、なんで俺は気がついてやれなかったのだろう 朝倉が泣いていたのは寂しいからだけだと思っていた いや、それもあっただろう だから、俺はずっと朝倉を大切にしてきた でも、それは――― ごめんな? 「え?」 俺は、本当の意味でお前を見てやれなかった 俺は、わかったつもりになっていただけなんだ 朝倉の、お前の本当の苦しみを理解してやれなかった 「……………て」 俺の自己満足だったんだ 「………めて」 俺は、口先だけだ わかったふりだけしていたんだ 本当は、何もできていなかった 「………やめてよ」 俺は偽善者だ 何も知らない一人よがりだ 一人で満足したつもりになっていたんだ 俺は、最低の人間だ 「やだ、やめて」 俺は、お前を守ってなんてやれなかったんだ! 「やめて!!」 かすれた声で精一杯大きく叫んだ朝倉 その反動で咳き込む 「げほっ!げほっ…………」 朝倉は一度声を落ち着ける 「私は」 朝倉は再び口を開いた 「私は、それでも嬉しかった」 ……… 「救われたの」 でも、俺は 「あなたは、そんなつもりじゃなかったとしても」 ……… 「でも、私は嬉しかった」 偽りのない本当の言葉 哀しみに包まれた、だけども真実を写す言葉 愛しくなる 目頭が熱くなる 何か、できることは、ないか? 俺は、泣いていた 自分の無力を嘆いていた それでも、こいつを、朝倉を―――― 「え?」 俺に、できること なんでもいい 何か、少しでもお前の負担を減らしてやりたい 「ありがとう」 もう、自己満足でも構わない 偽善者でも構わない ―――何かをしてやりたい それだけは その気持ちだけは、本当のものだと思うから 俺は抱きついていた腕を離した そして、朝倉の目を見据えた 「いいの?」 二人を遮るものは、もう何一つなかった ―――刻まれていく印 ―――刻一刻と近づく別れの時 ―――俺と朝倉は互いだけを見た ―――そして互いのみを感じていた ―――二人でいられる最後の夜に ―――その深い深い闇の中で ――――真夜中 カーテンの隙間から差し込む月灯りの下 俺は目を覚ました いつのまにか寝ていたらしい 十二時をまわっている 今日は朝倉が消えてしまう日 振り向く そしてようやく気が付く ――――朝倉? 俺の横 月灯りに晒される空の布団 朝倉涼子が寝ていたはずの場所に あいつはいなかった 開かれた部屋のドア 廊下へと続く黒いシミ まるで血の様な……… 朝倉! 部屋を飛び出す 血の跡を追う 玄関の外 夜の闇の中 俺は手掛りを見失う 朝倉涼子は 姿を消した ……… …… … 長門! 満月の夜 空に散りばめられた星の万華鏡の下 消えてしまったあいつを探すために 俺は長門に協力を依頼した 俺が自転車でいつもの公園にたどり着いた時 あいつはいつもの服装ですでに俺を待っていてくれた 北高のセーラー服に指定のカーディガン 静かな公園に浮かびあがるシルエット すまん、長門 俺はあいつを守ってやれなかった 俺の言葉を遮るように 「いい」 夜の闇に開いた一つの穴のように 長門は小さく、そして優しく呟いた そして俺の瞳を覗きこむ 「あなたは悪くない」 俺の気持ちをわかっているように語る長門有希 「朝倉涼子はそれを望んでいた」 …… 「あなたに責任は皆無」 だけど、俺は―― 「それ以上は不可能だった」 それでも―― 「あなたが哀しみを感じることは朝倉涼子の本意ではない」 だけど―― 「やめて」 俺はその時初めて長門の表情を見た 哀しそうな寂しそうな あの長門がはっきりと顔に感情をうかべ俺を見ていた 「お願い、やめて」 長門―― 「あなたは何も悪くない」 悪いのは―――」 …… 「彼女を連れてきてしまった私」 は? 「彼女はただ処分を待っていた存在だった」 長門は小さく語り始めた 「彼女がかわいそうだった 自身は何も悪くないのに あの事件は彼女の意志ではなかったのに 急進派に所属しているというだけで全てを奪われた 私は朝倉涼子という人格が嫌いではなかった 私に持っていないもの持ち、誰にでも優しく 私もよく話しかけられた」 俺はあの平行世界で仲良く鍋を囲む二人の姿を思い出した 「だから、私は彼女を再び私のバックアップに推した 彼女自身の処分は止められなかったが、代わりに一週間の自由が与えられた」 小さく、しかし力強く、それでいて優しく 昔の長門からは想像できないような口調 「だから悪いのは私 幸福を感じると、別れの時に苦しみが増すのだと知っていたのに 私はあなたに、彼女を任せた」 何も言うことができなかった 長門自身こんなにも悩んでいたんだ 俺はまた自分のことだけを……… 本来は優しいはずの夜の静寂が俺の身体を切り裂く 喉が痛い やっとの想いで俺は静寂に言葉を置いた ―――朝倉涼子を探さないと 行ったところで何もできないかもしれない 来てほしいとも思ってないかもしれない でも、俺はあいつのもとに行かなきゃいけない なぜかはわからなかったが、そんな気がした 「彼女の所在は把握している」 長門が呟いた 「彼女は情報封鎖を起こし自分を閉じ込めている」 何処にだ? 「かつてと同様の場所」 それは――― 「そう」 「あなたと朝倉涼子が初めて邂逅した場所」 ―――――― 「遅いよ」 長門の力で教室に入りこんだ俺は朝倉涼子と再びあいまみえた あの時、俺の命を奪おうとした時と同様に 今、再び俺と朝倉は互いに向き合っていた 「あなたを殺して、私は本来の使命を果たす」 朝倉の手に握られたナイフ 顔に浮かべられた微笑 何もかもがあの時と同じ ――――朝倉の苦しそうな表情と、静かに涙を浮かべている瞳を除いては 「じゃあ、死んで」 ナイフを握りしめ、俺に走りよる朝倉 俺は――――逃げなかった 逃げる気になれなかった 両手を広げ、目をつぶる 迫る気配、覚悟を決めた しかし、ナイフは、身体にのめり込む寸前で停止した 朝倉の顔には困惑の表情が浮かぶ 「なんで、なんで逃げないの?」 弱々しい口調で、疑問を口に出す朝倉 なんでだろうな? 刺されないと思ったわけじゃない 刺されたくないと思わなかったわけでもない ――――でも、お前が望むなら、俺は―――― 「―――っ」 ナイフを落とした朝倉 カラン、と渇いた音が響く 俺は朝倉を抱き寄せる 朝倉ははっと息を飲んだ お前が望むのなら、俺も共に逝こう お前が望むのなら、地獄まで共に行こう 正直に自分の想いを述べる それほどまでに、俺は朝倉を大切に想っていた 腕の中で首を横に振る朝倉 「ごめんなさい、でも私――――」 暗かった教室に灯りが戻る 腕の中で朝倉の力が抜けるのを感じる 情報封鎖が解除された 「ごめんなさい ごめんなさい… 本当に、ごめんなさい」 涙を流して繰り返す朝倉 俺は無言で、腕の中で朝倉が泣いているのを聞いていた ―――――カララ 突如金具の音が響く 「長門………さん?」 開かれたドア 静かに長門が入ってきた そしてその手には、拳銃が握られていた 長門? 「朝倉涼子のインターフェイスとしての機能を完全に停止させるプログラム」 淡々と、そして感情を亡くしてしまったかのように、長門は述べた 長門が構える その銃口は朝倉を捉えていた 朝倉を抱く腕に力が入る 喉がカラカラに乾くのを感じる なんでだ なんで朝倉が 悔しい 守れない 約束したのに ごめん 「放して」 朝倉が俺の手をふりほどく 俺は黙って、朝倉が歩き出すのを見た 長門に歩みよる朝倉 長門の顔に僅かに哀しみの色が見える ―――5メートル ―――3メートル ―――1メートル そして立ち止まる 「撃って、長門さん」 そして銃声が鳴り響いた ……… …… … 鳴り響いた銃声 胸を貫いた銃弾 飛び散る血滴 身体に埋め込まれたプログラムが発動する それを感じとる 「朝倉!!!」 彼がかけよる 倒れこむ私を支える 彼の瞳から涙が溢れているのを見た ごめんね? 私は最期まで自分勝手だね 「朝倉……」 名前で、呼んで? 「涼、子?」 名前で呼ばれるのを感じる 嬉しい 哀しいはずなのに 悔しいはずなのに 苦しいはずなのに それでも、嬉しかった ありがとう ―ありがとう ――ありがとう ねえ 「なんだ、涼子?」 優しく答える彼 笑って? 私の言葉に一瞬困惑する彼 けど、次の瞬間には笑ってくれた 嬉しかった 私は生きていた 人間として生きていられたんだ 彼は愛してくれたんだ 最期にもう一ついいかな? 「ああ」 願いを語る ひとみを閉じる そして 互いの唇が重ねられ――― 「涼………子?」 ‐END‐ ~エピローグ~ ……… …… … 彼は朝倉涼子の亡骸をずっと抱えていた 「涼………子?」 彼女の瞳はもう開かない 静かな教室 彼は声を出して泣かない ただ涙を流れるままに 何も語らない ただ亡骸を眺めるだけ 彼がふと、私を見た 「長門、泣いてくれてるのか?」 彼に言われ初めて自分が涙を流しているのに気づく なぜ? そんなことわかっている 悲しい 私も、彼女とわかれたくなかった それだけじゃない 言語化できない 私の中で致命的エラーが蓄積していくのを感じた 「ありがとうな」 何が? 「あいつを楽にしてくれて」 私が撃たなければ彼女はインターフェイスとして活動を停止し、亡骸すら残さずに消えていた それが耐えられなかった 私が引き金をひいたのは自分のためだった 礼を言われるようなことはしていない 彼女の亡骸は私が引き取る 「ああ」 彼女は幸せだった 「そうか、な」 断言する あなたは約束を果たした 彼女の心は、守られた ……… …… … あの時から数年の月日が流れた いろんな思い出を手にした 俺はハルヒと結ばれていた 春には新しく家族が増える予定だ 普通の人間になり、俺の友人として活動している古泉 未来に帰った朝比奈さん そして長門はたまに情報統合思念体の使いとして顔を出す 当然ハルヒには秘密だがな? そして今日、久しぶりに俺は長門と会う 高鳴る鼓動を抑え、待ち合わせ場所で待っている あいつが俺を待たせるなんて珍しい―――― 「お待たせ」 数ヶ月前とほとんど変わらぬ格好で長門は現れた 大分感情も豊かになり、多少の感情も表現できるようになっていた 「この子の準備で遅れちゃって」 長門の姪 数年前から長門の所で暮らしている 「こんにちは!おじさん!」 元気に笑顔で挨拶してくる 思わず苦笑する 似合ってるぜ?その服 でもな? おじさんはないだろ? ――――涼子 ‐ True End ‐
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その日の授業を終えた女子生徒は教室で友人達と談笑していた。 急に大きな声で「助けて!」と叫ぶのを聞いた彼女等は驚いて廊下に飛び出すと 気絶した男子生徒とそれをささえる朝倉涼子が立っていた。 よく見ると男子生徒は腹部から血を流していて制服が真っ赤に染まっており 朝倉涼子のほうも、腕から血が流れでていた。 「助けて!ナイフを持った人が突然襲い掛かってきて!」 それを聞いた女子生徒はすぐに警察と救急車をよんだ。 「………くん」 「…ョンくん!」 声が五月蝿い… 誰だ俺を呼ぶのは…… 「んっ……あ?」 「キョン君!」 目が覚めて最初に飛び込んできたのは、泣き顔で飛び付いてきた朝倉だった。 「っぐ……痛い」 「あっ!ごめんなさい。キョン君怪我してるのに…嬉しくてつい。 だって、もう起きないかと思ったし…」 あたりを見渡すと、俺の部屋ではないことは確かだ というか、病室にしかみえん。 腕には点滴のチューブが刺さっているし、脇腹がもの凄く痛い。 朝倉も左腕に包帯を巻いていた。 SOS団の面々もいた。状況が全く飲み込めない 「なぁ…どうしたんだ?」 マヌケな質問だったのだろう。その場にいた全員が驚いた顔をしていた。 「…覚えてないの?」 朝倉が心配そうに顔を覗き込んできた。 しかし、何も覚えていない。 部活に行く前に朝倉と教室で話していたことは覚えている。 それがどうして病室のベッドの上で寝ているんだ? 「あんた本当に何も覚えてないの?」 もったいぶってないで早く話して欲しいんだが 「あんた刺されたのよ!学校で。朝倉さんから電話貰ってみんなですっ飛んできたけど あんたがここまでマヌケだったとわね!」 言い返そうとした間際、ハルヒの目元が赤く腫れているのに気付いてやめた 朝比奈さんはまだ泣いているし 古泉や長門も心配そうな顔をしている。 朝倉の詳しい話を聞いたが、まるで信じられないが、しかし 「そうだったのか…。みんな心配かけて悪かったな」 「べっ!別に心配なん…」 「おやおや?病室に入るなり泣き崩れたのは涼宮さんだと思ったんですが」 「もっ、もう!古泉君、余計なことを~」 笑いがこぼれる 「いや、ハルヒ心配かけて悪かったな」 「だから、私はっ!」 「朝倉も迷惑かけて悪かったな」 「そんなこと言ってないで、早く怪我治しなさいよ」 「ハハッ、努力する」 それから少し談笑し「体に触るとあれですので、そろそろおいとまさせていただきます」 と古泉の一言でハルヒ達は帰っていった。 帰り際、長門が 「気を付けて」 そう耳打ちしてきだが何だったのだろうか? 病室には俺と朝倉だけが残っていた。 「なぁ、左腕…」 「あっ!これはかすり傷だから気にしないで、ね?」 「悪い、俺のせいで…」 「別にあなたのせいじゃないわ」 「でもっ……」 喋ろうとしたら、朝倉が人差し指を俺の口の前に立てて 「キョン君も私も被害者なんだから、あなたが気にすることじゃないでしょ? まぁ、もし、お嫁さんに行けなくなったら責任とってよね?」 「お前みたいな器量の良い嫁さんが貰えるなら、こっちから頼みたいもんだ」 二人で見合って、ぷっと吹き出す。 「ふふっ、なんかこういうの中学の時ぶりね」 「そうだよ……あっ」 丁度、母親が病室に入ってきた。 「あっ、叔母さん。こんばんは」 「あら?涼子ちゃん!ごめんなさいね、うちのバカ息子が」 確かにそうだが本人の前で言うなよ。母さん 「いえ、そんなことないですよ。 キョン君がかばってくれなかったら私がそこに寝てたわけですし」 ん~、流石朝倉 やっぱ、良い奴だな んで、朝倉と母親がこういう時の通過儀礼的会話をして 「またくるから」 と帰っていった。 ふぅと溜め息をつくと母さんが俺のほうをみて 「涼子ちゃんみたいな幼馴染みがいて良かったわね」 「うっせぇよ」 勿論照れ隠しだ。 あんなに可愛く、器量の良い女の子が俺に良くしてくれるんだぜ? かたやクラスの人気者、かたや学校を代表する変人の一の子分。 リアルなら有り得ない話だろ?―――リアルなわけだがな――― その後、親はすぐに帰って一人になった病室で事件のことを思い出そうと 奮闘していたが1㎜も成果があがらぬまま眠りについていた―― ガラッと扉の開く音と共に待ち兼ねた客人が姿を現した 「こんにちは」 無論朝倉涼子だ 「おう。待ちくたびれぞ」 少し呆れたような、しかし、どこか嬉しそうな笑みを浮かべながら 「これでも終業のチャイムと同時に飛び出してきたのよ? そんなに待ってくれてたのは悪い気はしないけどね」 普段、怠惰と一緒に無駄な時間を貪っている俺でも、病院という特殊な空間での 余暇は苦痛なのだよ。 「あら、そうなの?大変なのね」 と、思ってもないことを冗談めいた口調で言う。 それからは、朝倉涼子が語る今日の楽しい学校の時間だ。 昨日の今日だと言うのに、誰も俺の話はしなかったという。 いやはや、俺の人望のなさが如実に現れましたね 「それで、怪我と……記憶のほうは?」 医者が言うには、事件のショックによる局部的な記憶障害だそうだ。 午前中いっぱいかけて、仮面ライダーにでもされるんじゃないかってくらいの 仰々しい精密検査をしたからまず間違いないだろう 「……治るの?」 「あぁ、落ち着けば治るだろうってさ。 まぁ、自分が刺された時の記憶なんて思い出したくないがな」 パァっと満面の笑みを浮かべる朝倉 「そっか。良かった」 それよりも朝倉の腕のほうが気になるのだが 「私の傷は浅いもん。全然平気」 「そうか」 それからなんとなく気まずい雰囲気が流れる。 その雰囲気を打ち破ったのは、俺でも朝倉でもなく 「おーす!出張SOS団でぇすっ!」 扉をぶち壊しそうな勢いで入ってきた我等が団長こと涼宮ハルヒだった。 「キョ~ン、生きて………ん?あら、朝倉さん来てたの?」 病院だってのにこのうるささ、まったく常識ってやつが欠落してるんじゃないか? 「えぇ。でも、涼宮さん達も来たみたいだから帰るわね」 「おい。もう帰るのかよ」 「そうよ!私達に遠慮なんてしなくていいのよ! こういう時はみんなで騒いだほうが元気がでるってもんでしょ!」 「じゃあ、お言葉に甘えましょうかしら」 「やぁっ!キョン君。鶴屋さんだよ!」 SOS団の面々の後ろからひょこっと顔をだす 「来てくれたんですか?ありがとうございます」 「いやぁ~、昨日みくるが泣きながら電話してきた時は 物凄いことになってるのかと思ったけど元気そうで何よりだよ!」 俺の朝比奈さんが泣きながら鶴屋さんに電話かぁ うん。実に良い! その様子を妄想するだけでご飯三杯は行けるな 「いやぁ~、しかしキョン君も罪な男だねぇ みくるはいつも泣くけどハルにゃんまで泣かせたんだってぇ 加えてそこの、え~と朝倉さん?も 実を言うとこの鶴屋さんもみくるの電話の後心配で泣いたにょろよ」 「それ嘘でしょ?」 「いやぁ、あっはっはっ」 それからはものっそい勢いで騒ぎだす。何度看護婦さんに注意されたことか ハルヒと鶴屋さん、いつもの二倍弄られている朝比奈さん。 それを微笑で眺める古泉に、我関せずの長門 それを見てると自然と笑みがこぼれる 「どうしのキョン?気色悪い」 「いや、俺の居場所はSOS団なんだなってな」 「何言ってんの!当たり前でしょ」 「そうですよ。今更僕達のような存在を受け入れてくれるのは 良くも悪くも涼宮さんぐらいのものです」 やはり奇人変人の集まりに首までどっぷり浸かってしまった俺を 快く歓迎してくれる奴などいないらしい。 そんな和気藹々と我等がSOS団への愛着心を語っていたとき ガタッと椅子の倒れる音がした。 「ごっ、ごめんなさい。ちょっと用事思い出しちゃって」 と、複雑な表情を浮かべた朝倉が脱兎のごとく帰っていった。 朝倉が帰って間も無くだ。病室の扉から現れたのは、鬼の形相のおふくろだった。 恐らく、騒ぎの一端を看護婦から聞いたのだろう 凍る空気を感じ取ったハルヒ達は薄情にも俺を残しそそくさと帰っていった。 その後、俺がこっぴどく叱られたのは周知の事実で、 あまりの怒声に今度はおふくろを止めに看護婦が割り込んできたほどである。 さて、看護婦に何度も謝った後おふくろは帰って行き病室には俺一人となった やっと静かになったと溜め息をつきつつ、 満更でもないという表情が鏡に写っているのに気付いた まさにその時だ 病室に誰かが入ってきた。 言い忘れでもあったのか?母さん しかし、扉から姿を現したのは違う人物だった。 随分前に帰ったはずの朝倉涼子だった 忘れ物でもしたのだろうか? しかし、俺の問いかけには答えず無言で近付いてくる 「おい!朝倉?」 「…え?あ、そうなの。忘れ物しちゃって」 「何を忘れたんだ?」 「え~っと、確かこのへんだったんだけどなぁ」 そう言いながら棚のあたりを探し始めた それから一分程たっただろうか 「ねぇ、キョン君?自分がどうしても欲しいモノが手に入らないときどうする?」 なんだ?忘れ物見つからんのか? 「普通の人は諦めたり、別のモノで誤魔化したりするじゃない?」 「何の話をしてるんだ?」 「でもね、昔から――本当に小さい時から欲しいモノだったの」 どうやら俺の質問に答える気はないようだ 「そんな時は殺してでも奪い取れって言うでしょ」 「言わなくもないが」 「でしょ?だからね」 ―― ― 「あなたが悪いのよ」 いつもと変わらない優しい笑みで言う朝倉――が、しかし、ほのぼのもしていられない。 なんたっていきなりマウントポジションを取られ、くわえてミリタリーナイフを 突き付けられてるのだからな。 どうせまたがるのならもっとエロい時に…… と妄想にふけりそうになる思考にストップをかけ 「おい?何の冗談だ」 「最初わね、あの女を殺そうと思ったの。あの泥棒猫をね」 「だって、そうでしょ? 私は小さい時から――物心ついた時からずっとキョン君が好きだったの 任務なんてどうでもよくなるほどね それなのに、いきなり表れて強引に奪っていった。 おかしいと思うでしょ?普通」 どこか遠くを見るように淡々と語りだした 「でも、それじゃあダメだって気付いたわ」 「だって、彼女が――涼宮ハルヒが死んだらあなた悲しむでしょ? それに彼女を殺したりしたら私が消されちゃうもの」 何を言ってるんだ? 朝倉が俺を好き?ハルヒがなんだって?消される? 「考えたわ。どうやったらあなたが手に入るかってね。 結論はすぐでたの」 急に俺のほうを向き、大好きなうちのおふくろが作ったおでんを 目の前にした時のような笑顔を作った 「『な~んだ、簡単じゃない。キョン君を殺しちゃえばいいんだ』ってね」 随分と物騒なことをさらっと言うんだな朝倉。それも満面の笑みで 「涼宮ハルヒが死んで悲しむのは、あなたが生きてるから。 あなたが死んだ後に彼女がどうなろうとわからないでしょ?」 ハルヒが死ぬよりも、俺は俺自身が死ぬほうが悲しいんだがな と発言しても今のこいつには無駄なのだろう 「思い立ったら吉日だっけ?私はすぐに行動に移したわ。 だって、あなたが涼宮ハルヒに汚される前に殺らなくちゃ 何の意味もないもの」 「次の日の放課後教室に呼び出した。 こんな可愛い幼馴染みの呼び出しだものね、なんの疑いもなくやってきたわ」 目は焦点があっておらず、怪しげに口元を歪めた 「ねぇ、覚えてないって言うけどもうわかったんじゃない? あの日誰に脇腹を 刺・さ・れ・た・か・♪」 次の瞬間バッと記憶が舞い戻る。 今まで無理矢理押し込められてた記憶が 今の台詞を『キー』に解放されたみたいな感じだ。 まるで、情報規制が解かれた翌日のテレビ番組のように はたまた、情報操作により歪められた記憶が正常に戻るかのように 記憶が土石流のように流れ込んでくる。 「…思い出した。でも……そんな…有り得ないだろ」 「この状況でもそんなことが言えるのね。ホントに優しい人」 だって、おかしいだろ? 襲われた俺を助けてくれて、病院でも毎日介抱してくれたのは紛れもなくコイツだ。 なのになんで俺の記憶にはナイフを持った朝倉が俺を刺してるんだ? 確かに今はこんな状況だ。 俺の上にはナイフを持ってる朝倉がいる。 いや、しかしだぞ。あの時殺そうと思ってたなら助ける必要が全くないだろ。 それに、まだまだおかしい所がたくさんある。 逃げ出そうとしたら、いきなり教室の扉も窓も無くなったり 化け物みたいに朝倉の手が伸びたり 変な呪文みたいなのを唱えたり やっぱりこの記憶は間違ってるんだ。 だってこれじゃあ、 まるで長門――つまりは対有機生命体コンタクト用以下略じゃねぇか 「ふふっ、何にもおかしくないのよ」 「どういうことだよ」 「だって、私も長門さんと同じ存在だもの」 「だって、長門は三年前にっ……」 「みんながみんな三年前に作られたわけじゃないのよ。 情報統合思念体は涼宮ハルヒが現れるよりも前から地球という惑星に住む 有機生命体に興味を持っていたの。」 「だから、涼宮ハルヒ発見よりも前に送り込まれた者がいてもおかしくないでしょ? つまりは、それが私。」 「だって、成長もしてるし…お前の親だって」 「有機生命体と同じ時間軸を生きることにより その進化について知ることができるんじゃないかって考えた情報統合思念体は 成長するインターフェースを作った。 これで問題ないでしょ?」 「親はどうなんだよ。長門にはいなかったのに…」 「親ね…。長門さんに聞かなかった? 私達の得意なことは情報操作だって」 じゃあ、俺の記憶は? やっぱりお得意の情報操作をされてて… 「確かに情報操作は行ったけど、それは事件のことを忘れる操作。 それが解かれたから記憶が戻った。 つまり、今のあなたの記憶は真実なの」 「っ。じゃ、じゃあ、なんで助けたんだ?」 「やっぱり後悔したから。だって、好きだものキョン君のこと」 恥ずかしそうな顔をする朝倉。 事が事じゃなかったらいますぐ抱き締めてやりたいって思ったくらいだ 「だから、私が刺したことは無かったことにしようって。自分勝手だけどね キョン君の記憶を消して、自分で腕を切って助けを呼んだ。」 「それからキョン君が目を覚ますまで気が気じゃなかったわ。 凄い後悔した。なんでこんなことしたんだろうって」 「それから涼宮さんが駆け付けてきた時には心は決まってた。 また今まで通りの関係に戻ろうって」 「涼宮さんはあなたに惹かれ、あなたも涼宮さんに惹かれていた。 私が入り込む隙間なんてないもの。」 「でも、やっぱり我慢できなかった。 あなたと涼宮ハルヒが仲良くしているのを見るのは」 俺はただ黙って聞くことしか出来なかった。 「17年前にね、情報統合思念体にこの地球に産み出された。 姿は赤ん坊だったけど、高度な知能があったから何も問題なかったわ。」 「それから周りの地域を調べたの。 で、たまたま同時期に産まれた人間の子供――あなたを発見した。 観測するにはうってつけの対象だったわ。」 「そこからは簡単。 あなたの家族に私の親や私の情報を書き加えるだけ みるみるうちに幼馴染みの完成ってわけ」 「それから観測を開始したわ。 時にはこちらで事を起こして欲しい観測データをとったりね」 「観測を始めてから数年がたったある日、私に重大なバグが生じたの。 本来生まれる筈のない感情。 ただの観測機でしかない私には邪魔にしかならない感情がね」 それが恋心ってヤツか? 「そう。それも観測対象に対して」 「そんなはずないって否定して忘れようとしたわ。 でも、情報統合思念体はそんな感情持ち合わせちゃいない。 情報統合思念体もわからないものをどうして私が対処できようか?いや、できまい。」 こんなときに反語って… 「だって、あなたがつまらなそうな顔してるんですもの」 つまらなくはない。ただただ呆然としているだけだ。 こんな打ち明け話されたら、誰だってそうなる。俺だってそうなる。 「それでね、対処ができないままズルズルと月日を重ねていった 幸い観測に支障を来すことなくね」 「でもね……」 ぐっと間をあける 「涼宮ハルヒが現れてから状況は一変した。 あなたと涼宮ハルヒが仲良くするのを見て胸が痛むようになったわ 有機生命体で言う所の嫉妬心ってヤツね」 「その感情は日に日に強くなっていった。あんな事をしでかすほどにね でも、諦めようって決めたから抑え込んでた。あの言葉を聞くまでは」 「あの…言葉?」 「そう。今日、涼宮さんと話してたでしょ? 俺の居場所はSOS団だからって」 「それを聞いた瞬間、私の中の何かが壊れたわ 言い表せないような感情が渦巻いた だから、私は決心した。 もう後悔はしない」 長い長い朝倉の話が終わった。 静かにナイフを振り上げる。 俺も覚悟を決めた。 怪我のせいで抵抗する気力も起きやしない。 緩やかにナイフが振り下ろされた 「じゃあ死んで」 終わり
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No.023 朝倉涼子 制服ver. (Ryouko Asakura School Uniform Ver.) 「うん、それ無理。だってあたしは本当にあなたに死んで欲しいのだもの。」 「わわわ、忘れも…、のぅわ!?」 情報 作品名 涼宮ハルヒの憂鬱 価格 2,500円(税込) 発売日 2008年11月28日 商品全高 約140mm 付属品 表情:微笑顔、目閉じ笑顔 武器:ナイフ 手首:×11(長門用交換右手首×1) 共通付属品(スタンド、スタンド用アーム、収納袋) その他:谷口頭部パーツ 画像 キャラクター概要 朝倉涼子 キョン、涼宮ハルヒと同じクラスに所属する女子生徒。途中からクラス委員長となる。 気質的にも委員長の風格を漂わせる彼女であったが、正体は長門有希と同じく情報統合思念体の一部であり、いくつかある派閥の一つの急進派に属する。長門有希は主流派。 同じインターフェースであり無口な長門とはまるで反対に、感情表現も豊かで明るく社交的な性格。クラス内での人気も高かった。 情報統合思念体の目的である、涼宮ハルヒから放出される情報の爆発を観測するために独断で「鍵」とされるキョンの刺殺を企てるも、辛くも介入してきた長門との戦闘の末に消滅させられてしまうのだが…。 谷口 キョンや涼宮ハルヒのクラスメイトにしてキョンの悪友。 顔はいいのだが軽い性格とナンパ癖が災いし、女子にはモテないでいる。美人ぞろいのSOS団で朝比奈みくると長門有希と別け隔てなく接するキョンのことを時に羨望したり、時にSOS団の巻き起こすイベントに参加したりもする。 彼曰く、上記朝倉涼子はAA+、長門有希はAマイナー。 中学時代は涼宮ハルヒと同じ学校に所属していて、高校入学時から涼宮ハルヒについてよく知る人物。その記憶が、彼を(一度きり、本人には無自覚に)重要なキーマンへと押し上げた。 商品解説 鶴屋さんと同様に別のキャラクターの頭部がついた商品の二弾目。ただし、再現するには別売りのキョンのボディが必要になる。 作中の戦闘シーンを再現するための長門用交換用右手首に加え、朝倉用にも通常の持ち手の代わりに、作中の再現のためにやや特殊な形状の持ち手が付属する。 良い点 悪い点 注意点・不具合情報 上記の通り、持ち手の形状がやや特殊で、腕部に対してやや斜めに差し込むような形になっている。また穴の大きさ、形状も付属のナイフ以外は入りにくい。 後ろ髪のパーツの形状から胴体のスタンド差込口が水平よりやや上向きになっている。 関連商品 涼宮ハルヒ 制服ver. 涼宮ハルヒ 夏服ver. 涼宮ハルヒ チアガールver. 涼宮ハルヒ 中学生ver. 涼宮ハルヒ 光陽園学院ver. 超勇者ハルヒ 長門有希 制服ver. 長門有希 悪い魔法使いver. 朝比奈みくる 制服ver. 朝比奈みくる チアガールver. 朝比奈みくる 戦うウェイトレスver. 朝比奈みくる 大人ver. キョン 制服ver. 古泉一樹 制服ver. 鶴屋さん 制服ver. 鶴屋さん 文化祭メイドver. コメント 名前 コメント